要点
令和9年4月1日から、電子マニフェストを使用する処分受託者に「処分方法ごとの処分量等」の報告義務が課されます。
この報告義務違反は、条文上は、廃棄物処理法第27条の2第十号の罰則(虚偽報告等)の対象になり得る構造になっています。
ただし、環境省は、廃棄物処理法施行規則改正前に行ったパブリックコメント募集時に
なお、処分受託者による再生に係る情報の報告については、法第27条の2第10号の罰則規定は適用されない。
と明言していたため、産業廃棄物処理業界としては、それほど大きな危機感を持っていない面がありました。
(※参考記事)
2025年9月29日付記事 「令和7年の施行規則改正で環境省が電子マニフェスト報告事項を増やした背景の分析」
しかしながら、令和8年の廃棄物処理法改正法案(現在国会審議中)には、その「罰則除外」の規定が盛り込まれていないことが判明しました。
1. 令和9年4月1日から施行される報告義務
廃棄物処理法施行規則の改正により、令和9年4月1日から以下の規定が施行されます(本稿に関連する条文のみを抜粋)。
廃棄物処理法施行規則第8条の34の3の2(処分受託者の情報処理センターへの再生に係る報告)
処分受託者は、法第12条の5第3項の規定による報告(産業廃棄物の処分が最終処分であるときに限る。)を行うとき又は同条第4項の規定による報告を行うときは、受託した産業廃棄物について最終処分が終了するまで又は再生を行うまでのすべての処分について、各処分ごとに、情報処理センターに次に掲げる事項を報告しなければならない。
一 処分を行つた者の氏名又は名称及び許可番号
二 処分を行つた事業場の名称及び所在地
三 処分方法
四 処分方法ごとの処分量(当該処分量を的確に算出できると認められる方法により算出される処分量を含む。)
五 処分後の産業廃棄物又は再生された物の種類及び数量(当該数量を的確に算出できると認められる方法により算出される数量を含む。)
上記の「処分方法ごとの処分量」の報告(第四号)が、今回問題となる項目です。
2. 罰則との関係
廃棄物処理法第27条の2第十号は、法第12条の5第3項及び第4項の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者に対して、「1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金」という刑事罰を定めています。
第8条の34の3の2の報告義務は、法第12条の5第3項及び第4項に基づく義務という位置づけになります。
そのため、条文の構造上、第8条の34の3の2に基づく報告(処分方法ごとの処分量等)を行わなかった場合、または虚偽の報告をした場合には、第27条の2第十号の罰則が適用され得るという整理になってしまいます。
3. パブコメ募集時の環境省の説明
廃棄物処理法施行規則改正に際して行われたパブリックコメント募集時に、環境省は以下のように説明していました。
なお、処分受託者による再生に係る情報の報告については、法第27条の2第十号の罰則規定は適用されない。
また、環境省は寄せられたパブリックコメントに対する回答として、(「再生」に関する情報に限定した言及ですが)次のように明確に「罰則の適用対象とはしない」と明言していました。
つまり、「募集時(最初)」と「募集後(最後)」の両方で、
環境省は「『電子マニフェスト使用時の処分業者の処分量内訳報告』については、間違った内容を報告した場合でも刑事責任を問わない」
と明言していたことになります。
補足:なぜ「罰則の適用除外」とされたのか?
その理由は一つしかありません。
それは、「よほどの小規模零細事業者でない限り、処分業者にとって把握不可能な数値だから」です。
そうなる理由については、当ブログ 2025年7月8日付記事 「廃棄物処理法施行規則改正(令和7年4月22日)Vol.3「電子マニフェスト使用時の再生に関する報告」(中編)」 で解説しています。
(ほぼ)原始的に不可能な行為を刑事罰の対象とされてしまうと、世の中の産業廃棄物処分業者すべてが犯罪者になってしまいます。
少なくとも、パブリックコメント募集時の(そしておそらくは現在も)環境省が、そのように過激な思想を持っていなかったことだけは明確です。
4. しかし、改正法案に罰則除外規定が存在しない
令和8年4月10日に閣議決定された廃棄物処理法改正法案(現在国会審議中)を確認したところ、
電子マニフェストの報告内容に関する罰則「第27条の2」は改正対象に含まれていないことが判明しました。

上記の画像は、環境省が公開した「【新旧対照条文】廃棄物の処理及び清掃に関する法律等の一部を改正する法律案」で、上段が今回の改正法案、下段が現行法の関連部分ですので、廃棄物処理法「第27条の2」については「改正対象としてはアウトオブ眼中」であることが如実にわかります。
少なくとも、現時点で公表されている改正法案を見る限り、パブコメで約束した「罰則不適用」を担保する立法的手当ては確認できません。
5. 問題の深刻さ
この問題の深刻さは、単なる「法案の書き漏れ」では済みません。
①法律の罰則を通知や省令で停止することはできない
「罰則は適用しない」という方針をパブコメで示したとしても、法律上の罰則条文は有効に存在します。
これを停止・除外するには、法律の改正が不可欠です。
現在の日本の法体系下では、省令や通知によって、法律上の罰則を恣意的に読み替えるという蛮行は認められていません(ただし、後述するとおり、それでもやる可能性はある)。
②次の法律改正で間に合うか
令和9年4月1日まで約11ヶ月しかありませんので、一連の廃棄物処理法改正と同時に改正するのが最適、かつ最後のタイミングでした。
改めて新たに法律改正をするとなれば、審議会・パブコメ・法案作成・閣議決定・国会審議・成立・公布・施行というプロセスが必要であり、現実的には不可能です。
今国会で審議中の改正法案への修正という方法も理屈としてはあるが、現実的には非常に困難。
③実務への影響
想像できる最も怖い未来像としては、
- 「処分量の内訳に怪しい点がある」と、とある行政の、とある粘着質な行政官に目を付けられる
- 罰則(法第27条の2)の対象となる虚偽報告に該当するので、事業の全部停止処分をしてやろう
- 審査請求等も一応は可能であるが、事後の救済を得られる保証は無く、救済を得られたとしても早くて数カ月後となるため、顧客から失った信頼を取り戻すことは非常に困難
- 最初から除外規定が置かれていれば、上記のオソロシイ損失を被る可能性が無かったはずなのに、リスクが実際に起きた場合は、処理業者は泣き寝入りするしかない(!?)
というものがあります。
これは「不安」や「恐怖」を煽る目的で誇張した未来ではなく、現実に起きてもおかしくはない状況の一つでしかありません。
幸い、電子マニフェスト使用時のみの規制及び罰則ではありますので、処分業者としては「当社は紙マニフェストしか受け入れません」と表明すること自体は可能です。
しかしながら、DXに逆行するこうした後ろ向きな対応では、処分業者の紙マニフェスト返送コストが爆増しますし、何より電子マニフェストの普及推進という政策方針と真っ向から矛盾するという、本末転倒な結末しかありません。
6. 考えられる今後のシナリオ
| シナリオ | 可能性 | 備考 |
|---|---|---|
| 立法ミス(盛り込み漏れ) | 高 | 大改正のどさくさで見落とした可能性 |
| 通知で「罰則対象としない」と言い続ける | 高(筆者的には、「はらたいらさんに全部」レベルの本命視) | 暴論、暴挙に違いないが、日本的風土・慣習では許容される可能性あり |
| 施行期日の延期で対処 | 低 | 施行期日が政令委任なら可能性あり? |
| 今国会の法案修正 | ほぼ無理 | できるとしてもやるとは思えない |
| 方針転換して罰則適用へ | 低 であり 高 かもしれない | 電子マニフェスト普及施策と矛盾 誰の利益にもならない規制強化 |
7. 今後の注目点
- 環境省が本問題に気づいているか
- 施行期日(令和9年4月1日)の延期が行われるか
- 令和8年通常国会で追加的な法律改正が行われるか
本稿執筆時点(令和8年5月17日)では、環境省からの公式な説明は確認できない状況です。
実務上は、令和9年4月1日以降の電子マニフェスト運用に重大な影響を及ぼす可能性があるため、引き続き動向を注視する必要があります。
「価値判断」や「法律上のあるべき手続き論」とは別の次元で言うならば、筆者個人は、
「廃棄物運搬車両の白ナンバー問題」の時と同様に、2027年3月という施行直前に、環境省から「罰則の対象としない」という通知が発出される未来を本命視。
業界団体としては、会員企業の死活問題に直結する落とし穴であるため、早急かつ強力に環境省に明確な法制度化を要望する必要があります。
もっとも、本来であれば、パブリックコメント募集時にそれを済ませておく必要がありましたが
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