専ら物(もっぱらぶつ)とは、廃棄物処理法及び旧厚生省通知で定義された廃棄物処理実務で使用される専門用語です。
具体的には
廃棄物処理法
第7条第1項
一般廃棄物の収集又は運搬を業として行おうとする者は、当該業を行おうとする区域(運搬のみを業として行う場合にあつては、一般廃棄物の積卸しを行う区域に限る。)を管轄する市町村長の許可を受けなければならない。ただし、事業者(自らその一般廃棄物を運搬する場合に限る。)、専ら再生利用の目的となる一般廃棄物のみの収集又は運搬を業として行う者その他環境省令で定める者については、この限りでない。
として、「専ら再生利用の目的となる一般廃棄物のみの収集運搬を業として行う者」、いわゆる「専ら業者」については一般廃棄物処理業の許可不要とされています。
※一般廃棄物処分業、産業廃棄物収集運搬業、産業廃棄物処分業許可についても、同様の規定が置かれています。
さて、廃棄物処理法の条文上は、「専ら再生利用の目的となる廃棄物」としか書かれていないため、「大部分が再生利用、すなわちリサイクルされる物なら、何でも専ら物になるのやな!」と考えてしまいたくなります。
しかしながら、行政解釈としては、先述した旧厚生省通知の「昭和46年10月16日環整43号(改定昭和49年3月25日環整36号)」を半世紀以上踏襲し続け
4 産業廃棄物処理業
(1) 現在、事業者の委託を受けて産業廃棄物の処理を業としている者が存在するが、廃棄物の処理が必ずしも適正に実施されず、不法投棄等が頻発している実情にかんがみ、産業廃棄物の処理を業として行なおうとする者は、都道府県知事又は政令市市長の許可を受けなければならないものとしたこと。
(2) 産業廃棄物の処理業者であっても、もっぱら再生利用の目的となる産業廃棄物、すなわち、古紙、くず鉄(古銅等を含む)、あきびん類、古繊維を専門に取り扱っている既存の回収業者等は許可の対象とならないものであること。
「古紙」、「くず鉄(古銅等を含む)」、「あきびん類」、「古繊維」の4種類に限定しています。
昨今、飲料メーカーの水平リサイクル推進に伴い、資源としての奪い合いの様相を呈している「廃ペットボトル」については、「あきびん」でも「くず鉄」でもないため、「専ら再生利用に供される」場合でも、専ら物としてみなされず、各所で憤慨している方が多いと思われます。
しかし、今回の記事では、現代社会での専ら物の対象品目の妥当性については考察の対象とせず、「実務的な取扱い」に対して焦点を当てていきます。
「専ら物」に関するよくある誤解
専ら物に関する間違った理解として
「専ら物」は「有価物」なので、誰でも回収して良いのでしょ?
「ガラス製品」は「専ら物」なので、業許可無しで処分して良いのでしょ?
という話をよく聞きます。
まず、通知を再掲するまでもなく、廃棄物処理法の世界では、「専ら物は廃棄物」でしかなく、有価物ではありません。
もちろん、市況によっては、鉄くずの買取り価格が高額となり、回収費用を含めても有価物として販売可能な場合も多々あります。
しかし、その場合は、廃棄物ではなく、有価物です。
次に、たとえば、「ガラス窓」を再生利用するからといって、それを処分する場合に廃棄物処理業許可が不要となるわけではありません。
「ガラス窓」は「あきびん」ではありませんので、それに対応した廃棄物処理業の許可取得が不可欠です。
「段ボール」なら何でも「専ら物」になる?
段ボールは専ら物の「古紙」の代表品目ですが、「焼却」のために回収する時は、「再生利用の目的」として集めたわけではありませんので、この場合は専ら物には該当せず、廃棄物処理業の許可が必要です。
「専ら物」のポイント
以上のように、「専ら物=4品目」という単純な理解だけでは不十分であり、
- 「昭和46年10月16日環整43号(改定昭和49年3月25日環整36号)」の定義にあてはまるか
- 再生利用の目的や実態の有無
を実態に照らし合わせて判断する必要があります。
令和以前の行政解釈としては、廃棄物処理業許可無しで専ら物を取り扱える事業者は、「再生利用に専従している(業態としては)既存の専ら事業者のみ」という考えが主流でしたが、環境省の令和5年2月3日付通知で、
このことは、専ら再生利用の目的となる廃棄物以外の廃棄物の処分等を主たる業として行っている者であっても同様であり、当該専ら再生利用の目的となる廃棄物の処分等については、廃棄物処理業の許可は要しない。ただし、専ら再生利用の目的となる廃棄物であっても、それが再生利用されないと認められる場合には当該許可が必要であることに留意されたい。
という解釈が示され、廃棄物処理業者でも、「専ら再生利用の目的」で4品目を回収または処分する場合は、その品目の許可を受けなくても良いとされています。
