土地所有者が言ってはならない禁句|公費解体と不法投棄の法的責任

2026年5月13日付の北國新聞の報道で、能登半島地震の被災地・輪島市において二重の不法投棄が発覚した事案が明らかになりました。

卑劣二重投棄 自宅解体ごみ埋められ、その上に別業者?ダンプ4~5台分 輪島の男性宅の畑、がくぜん

公費解体を担当した業者が、解体工事で発生した廃棄物(柱材等)を所有者の畑に埋設。

さらにその上に、別の何者かがダンプカー4〜5台分もの解体廃棄物を不法投棄していたという、二重の違法行為が重なった事案です。

業者側は当初、「小さなごみは埋めていいと許可をもらった」と釈明しました。

この一言が、今回の事案の法的問題点を凝縮しています。

本稿では、この釈明がなぜ法的に成立しないのかを解説します。


問題点① 土地所有者の「少量なら埋めても良い」発言

廃棄物処理法上の責任は「当事者間の合意」で免除できない

廃棄物処理法第16条は、何人も、みだりに廃棄物を捨ててはならないと定めています。

この「何人も」という文言が重要です。

土地所有者の同意があっても、廃棄物処理法の規制は免除されません。

廃棄物の適正処理は、土地所有者と処理業者の間の私的な合意ではなく、公法上の義務です。

所有者が「自分の土地だから」「少量だから」「分解されるものだから」と許可を与えたとしても、それは廃棄物処理法上、何の効力も持ちません。

「土の中で分解される物なら仕方ない」という誤解

記事中で被害男性は「土の中で分解される物なら仕方ないが、柱などを埋めていいとは言っていない」と述べています。

法的には「分解されるかどうか」は埋設の適否を判断する基準ではありません

廃棄物処理法の規制対象である廃棄物を、地中に埋設することは、廃棄物の不法投棄(第16条違反)に該当します

分解速度や量の大小は不法投棄の成否に一切関係しません。

仮に所有者が「分解されるものは埋めていい」と言っていたとしても、それは廃棄物処理法違反の行為への同意を意味するものであり、法的には無意味です。

むしろ、土地所有者が不法投棄を依頼または働きかけたと疑われるきっかけになり得ますので、絶対に言ってはいけない言葉です。

建物所有者は発注者でも排出事業者でもない

ここで、公費解体の法的構造を整理しておく必要があります。

公費解体は、市区町村が発注者となり、解体業者と工事契約を締結する仕組みです。

本件のような公費解体では、通常、市区町村が発注主体となり、元請業者が排出事業者として処理責任を負います。

さらに、廃棄物処理法第21条の3第1項は、建設工事(解体工事を含む)に伴い生ずる廃棄物の排出事業者を、「当該建設工事の注文者から直接建設工事を請け負った元請業者」と明文で定めています。

つまり、今回の事案における排出事業者は解体を担当した元請業者であり、廃棄物の処理責任は法律上、元請業者が一元的に負います。

建物所有者は、発注者でも排出事業者でもありません。

したがって、「(土地の所有者から)許可をもらった」という業者の釈明は、発注者でも排出事業者でもない者からの同意を根拠にするものであり、法的にはまったく意味をなしません。


問題点② 「少量なら埋めていい」を真に受けて不法投棄をした業者

土地所有者の「埋めても良い」発言を信じた業者の法的責任

業者の「許可をもらった」という主張は、違法性の認識(故意)が無かったように見えますが、不法投棄は、土地所有者の許可があったとしても犯罪となります。

「法律の規定を知らなかった」が成立しないことを示す典型的な事例です。

廃棄物処理法第16条違反の刑事罰

不法投棄(廃棄物処理法第16条違反)に対しては、5年以下の拘禁刑もしくは1,000万円以下の罰金、またはその併科という厳しい刑事罰が規定されています(同法第25条第1項第十四号)。

法人に対しては3億円以下の罰金が科されます(同法第32条第1項)。

「少量だから」「許可をもらったから」という事情は、量刑上多少考慮される余地はあるかもしれませんが、犯罪の成立を妨げる事由にはなりません

原状回復義務と費用負担

記事では、解体ごみを埋めた業者は費用負担で撤去することに合意したとされています。

これは廃棄物処理法上当然の帰結です。


被災地における不法投棄の深刻さ

今回の事案は、能登半島地震の被災地、かつ公費解体で発生した廃棄物の不法投棄という特殊な文脈で起きました。

公費解体が大量に実施される中で、適切な許可・契約・マニフェスト管理が行われているかどうかの監視が困難になりやすい環境にあります。

また、被災地では人の目が届きにくい土地が増え、無許可業者や悪質業者による便乗投棄が起きやすい状況でもあります。

被災した土地の所有者が、「少量なら埋めても良い」とか「土で分解されるものなら埋めても良い」と安易に許諾すると、所有地に不法投棄を誘発する確率が確実に高まります。

自分自身の財産を守るためにも、廃棄物処理法の罰則を知ることは、日本に居住するすべての人にとって非常に重要です。


まとめ:「許可をもらった」は免罪符にならない

今回の事案から得られる教訓を整理します。

土地所有者・排出事業者の立場から:

  • 「少量なら埋めていい」「自分の土地だから構わない」という言葉は、廃棄物処理法上、業者への免罪を与えるものではありません
  • 不法投棄を積極的に依頼・容認したと受け取られるおそれがあります
  • 廃棄物の処理は、適正な許可業者への委託・産業廃棄物処理委託契約の締結・マニフェスト交付が必須です
  • 不法投棄を誘発するような言葉を業者にかけることは、道義的責任の観点からも避けるべきです

処理業者の立場から:

  • 「発注者に許可をもらった」「少量だから大丈夫」という判断は、廃棄物処理法上、まったく通用しません
  • 廃棄物の埋設は、分解されるかどうか・量が少ないかどうかにかかわらず、不法投棄に該当します
  • 廃棄物処理業の許可を受けた業者が、このような行為に及ぶことは、許可取消しを含む行政処分と刑事罰の両方の対象となります

廃棄物処理法は「当事者間の合意」によって免除できる法律ではありません。

この原則は、被災地の復旧現場でも何ら変わるところはありません。

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