遺跡への木くず埋設は誰の犯罪?|立木埋設の罪と罰

先日当ブログでも取り上げた、池上曽根遺跡での木くず埋設事件の続報が入りましたので、改めて違法性の有無を検討します。

なお、既に公開済みの記事は、文化財保護法違反で書類送検されたという報道(第一報)に基づくもので、廃棄物処理法上の問題点がその時点の報道では明らかにされていなかったため、廃棄物処理法上合法かどうかが判別しがたい面がありました。そのため、その記事は当ブログ上から削除(非公開化)した上で、本稿で廃棄物処理法上の問題点を指摘することとします。

第一報 2026年4月21日付 毎日新聞 「遺跡に木11トン埋めたか サーカス団関係者を書類送検 大阪

続報 2026年5月5日付 朝日新聞 「樹木11トン埋め、大阪の遺跡は壊された 疑われたサーカス団の反論

第一報時は、文化財保護法違反の内容に関する記述がほとんどであったため、「なぜ廃棄物処理法違反が問われなかったのか?」がよくわかりませんでした。

期待しながら、続報の無料公開部分を読むと、「埋めた人物は特定したが……」と、廃棄物処理法的には胸躍る見出しで終わっていますので、大急ぎで朝日新聞デジタルのベーシックプランの申し込みをしてしまいました(笑)。

結論を先に述べると、私のように廃棄物処理法の問題点に関心があるだけの方は、朝日新聞デジタルの有料プランに申し込む必要はありません。

有料記事のため記事自体は引用しませんが、見出しにあるとおり、埋立をした現場作業員自体は特定できたようですが、「文化財保護法違反で事件化するんや!」というストーリーがあったのか、廃棄物処理法違反としては事件化せず、「サーカス団関係者が文化財保護法違反をした」という容疑で、無理やり書類送検したとのことです。

「行為実行者が特定できたのであれば、なぜ廃棄物処理法違反で立件しないのか?」と、一介の行政書士に過ぎない私には理解できない顛末です。

サーカス団関係者が文化財保護法違反に該当するかどうかは専門外ですので、これ以上言及はいたしませんが、

廃棄物処理法違反となるかどうかについては明言できます。

結論:埋立を指示したのでない限り、サーカス団関係者は廃棄物処理法違反をしたことにならない

以下、事実と結論に至った理由を順に述べていきます。

実際に起きたこと

報道を整理すると、事実関係はおおよそ次のとおりです。

  • サーカス団は2022年3月から8月にかけて、池上曽根遺跡の史跡公園(約3.5ヘクタール)内でテントを設営し、公演を実施
  • 和泉市など周辺7市町が後援に入り、敷地は無償で提供された
  • 公演終了後の撤去作業の過程で、何者かが遺跡内を掘削し、伐採した樹木約11トンを複数箇所に埋設
  • その結果、弥生時代の遺構が損壊

ここで重要となるのが、サーカス団が公式サイトで公表した見解です。

撤去作業においては、専門的な作業を伴う部分について外部の事業者に委託し、適切かつ慎重に進められているものと認識しておりました。

そのため、今回のように木材等が地中に埋設されている可能性があるという事態については、当時想定しておりませんでした。

つまり、サーカス団側は「撤去・整地作業を外部業者に委託しており、自分たちは埋設を知らなかった」ことになります。

ここは、廃棄物処理法上は非常に重要なポイントです。

実際に木くずを埋めた人は誰なのか?

朝日新聞の報道では「現場作業員」としか書かれていないため、「整地作業の一環で立木を伐採した建設業者の作業員」なのか、「残された木くずの撤去及び処分を委託された産業廃棄物処理業者の作業員」なのかが判然としません。

ただ、「木くずの撤去・処分を委託された産業廃棄物処理業者」が、木くず保管場所に穴を掘って埋めて立ち去るという事態は考えにくいため、前者の「立木を伐採した建設業者」の作業員と仮定することにします。

そのように考えると、弥生時代の遺構に木くずを不法投棄した行為者は、

× サーカス団関係者

〇 サーカス団から整地作業の委託を受けた建設業者(元請か下請かは不明)

と考えざるを得ません。

廃棄物処理法上の責任は誰にある?

「建設業に係るもの(工作物の新築、改築又は除去に伴つて生じたものに限る。)

に該当する「木くず」は、産業廃棄物となります。

今回のケースでは、サーカス興行のための通路や敷地造成のために立木を伐採していますので、

「立木の伐採」は、「工作物(サーカステントや通路)」の「新築(設置)」を目的とした「建設工事の一環」と解釈できます。

そのため、伐採後の立木(木くず)の処理責任は、「サーカス団(注文者、一般的には発注者と呼ぶ)」から「注文を受けた建設業者(元請)」が負わねばなりません。

事実がこの前提のとおりである場合、木くずを建設現場に放置した元請は「不法投棄」をしたことになります。

ここで疑問

  • なぜ、元請は木くずを建設現場に放置したのか?
  • 発注者のサーカス団が「木くずは置いていけ」と強要したのか?
  • それとも、史跡管理者である和泉市が「木くずを置いていけ」と要求したのか?

この疑問は、廃棄物処理法上の責任を判断する上で、極めて重要な論点となりますので、この次の続報には更なる踏み込みを期待したいと思います。

排出事業者である建設業者が産業廃棄物を適正に処理しなかった場合、廃棄物処理法違反が成立します。具体的には次のとおりです。

  • 不法投棄(法第16条、法第25条第1項第14号):土中への不法な埋立は「投棄」に該当しうる
  • 委託基準違反(法第12条第5項・第6項):仮に下請業者に処理させていた場合、無許可業者への処理委託

廃棄物処理法の観点から責任を問われるべきは、排出事業者として適正処理義務を負う建設業者(および実際に埋設した現場作業員)となります。

サーカス団の位置づけ

冒頭の結論を繰り返します。

埋立を指示したのでない限り、サーカス団関係者2人が廃棄物処理法違反をしたことにはなりません。

そもそも、サーカス団は工事の発注者に過ぎず、廃棄物処理法上の排出事業者にも該当しません。

廃棄物処理法上の責任は、工事を引き受けた建設業者に帰属します。

本件を廃棄物処理法違反として立件するとすれば、不法投棄を実行した建設業者(現場作業員および法人・代表者)が対象となるのが筋です。

今回の捜査が「文化財保護法違反」一本で、廃棄物処理法違反としての立件がなされなかった理由は、報道からは判然としません。

ただ、廃棄物処理法の観点から見れば、排出事業者である建設業者の特定と立件こそが本筋(刑事罰も廃棄物処理法の方が重い)であり、

工事の発注者に過ぎないサーカス団員を文化財保護法違反容疑で書類送検するにとどまった今回の顛末は、廃棄物処理法の観点からは依然として「消化不良」と言えます。

📋 この法令改正、自社の実務に影響しますか?

「読んでわかった」と「実務で正しく対応できる」の間には大きなギャップがあります。
顧問契約では、個別具体的な疑問・判断に随時お答えします。

  • ✅ 法令改正のタイムリーな実務解説
  • ✅ 委託契約書・マニフェストのレビュー
  • ✅ 担当者からの個別相談に随時対応

コメントする