白トラ問題の誤解を解く|「廃棄物の処理(収集又は処分)」の正しい読み方【国土交通省文書解説】(第5回)

この記事はシリーズ記事です。

第1回 「一般廃棄物収集運搬業に貨物自動車運送事業法は当然に適用されるのか?」

第2回 「一般廃棄物収集運搬業に貨物自動車運送事業法は当然に適用されるのか?|国土交通省が示した「許可適用対象外」の条件を分析する」

第3回 「白トラ問題で排出事業者が本当に確認すべきこと」

第4回 「国土交通省が示した結論 ― 白トラ問題の公式整理」

第4回では、国土交通省の事務連絡により、

 廃棄物(廃棄物の処理及び清掃に関する法律第2条第1項に規定するものをいう。)の運送に関しては、廃棄物行政を所管する環境省から、廃棄物処理の主たる業務は、廃棄物の収集及び処分業務であり、廃棄物の運搬業務はこれらの業務を完遂するために付帯する業務であるとの見解が示されたところです。このため、廃棄物処理業者が、発注者である市町村や排出事業者と締結した包括的な委託等契約に基づき廃棄物の運搬と、その他の廃棄物の処理(収集又は処分)を一体的に実施する場合において、当該委託等契約に基づく業務の一環として行われる運搬行為(※)については、自己の生業である廃棄物処理業務と密接不可分であり、その業務に付帯して行われる運送であるため、法の許可等を要しないものと解されます。

「廃棄物処理業務の一環として行われる運搬は、一定の条件下で運送業許可を要しない」

という整理が示されたことを確認しました。

しかし、上記の整理には、誤解が生じやすい表現が含まれています。

「廃棄物の運搬と、その他の廃棄物の処理(収集又は処分)を一体的に実施する場合」

本記事では、この文言の意味を正確に読み解き、

・なぜ「収集」が併記されているのか
・どのような場合に「一体的実施」と評価されるのか
・どこからが「独立した運送行為」となるのか

といった論点について、実務に即して整理していきます。


1.結論:この一文だけを切り取って読むと高確率で誤解が生じる

結論から言えば、この文言は「行為の列挙」ではなく、
廃棄物処理の一連の流れの中での関係性を説明したものに過ぎません。

廃棄物の運搬と、その他の廃棄物の処理(収集又は処分)を一体的に実施する場合

この表現だけを切り取って読むと、

廃棄物処理法を知っている人ほど、

「運搬ではない収集って何?」という疑問が頭から離れなくなっていることと思います。

逆に、
「収集運搬業務であれば、廃棄物処理として、すべて白ナンバーで運用可能ということね!」
と、無制限に運送業許可不要になったと理解してしまった方もいるかもしれません。

そのため、以下、

「廃棄物の運搬と、その他の廃棄物の処理(収集又は処分)を一体的に実施する場合」

の読み方を「切り取り」ではなく、「構造的に」解き明かしていきます。


2.「収集」と「運搬」を別個の行為ではなく、「収集運搬」として捉えるべきだった

令和8年3月16日付国土交通省事務連絡によると、同文書が発出されるまでの経緯は、

  1. 環境省が国土交通省に対し、「廃棄物の運送に関しては、廃棄物処理の主たる業務は、廃棄物の収集及び処分業務であり、廃棄物の運搬業務はこれらの業務を完遂するために付帯する業務である」との見解を示した
  2. 国土交通省は、環境省の見解を是とした
  3. 令和8年3月16日付で、国土交通省物流・自動車局貨物流通事業課長名の事務連絡を発出

という流れになります。

私は、第1回記事以降、「廃棄物運送車両」ではなく、「廃棄物収集運搬車両」と意図的に用語を統一して使用していました。

国土交通省と環境省のどちらが「廃棄物の運送」と書いたのかはわかりませんが、廃棄物を運ぶ行為については、「運送」や「運搬」ではなく、「収集運搬」とした方が適切だったと思います。

また、「廃棄物の収集」とは「廃棄物の発生場所または保管場所に行き、廃棄物を集める(収集する)」行為を指しますが、

現実問題として、「廃棄物の収集」だけで廃棄物処理が完遂することはなく、

必ず、収集後に、「処分場所や別の保管場所まで運搬」することが不可欠です。

そのため、廃棄物の「収集」には、「運搬」が必ず付随します(密接不可分でもある)。

このように、本来であれば、「収集」と「運搬」を別々の行為として切り離して扱うこと自体が不適切なのですが、なぜわざわざ分離させたかという理由についてを考察してみます。


3.おそらく、廃棄物処理法の条文を機械的に引用しただけ

廃棄物処理法第1条(目的)は、

第1条 この法律は、廃棄物の排出を抑制し、及び廃棄物の適正な分別、保管、収集、運搬、再生、処分等の処理をし、並びに生活環境を清潔にすることにより、生活環境の保全及び公衆衛生の向上を図ることを目的とする。

と規定されており、

適正な「分別」「保管」「収集」「運搬」「再生」「処分」等が「処理」と総称されていることがわかります。

今回の国土交通省文書は、「運送」に似た意味の「(廃棄物の)運搬」を解釈の対象としているため、

「運搬」以外に、廃棄物「処理」と密接不可分な行為の例として「収集」と「処分」を挙げ、「収集又は処分」と書いているだけの話であろうと思われます。

そう考えないことには、

「国土交通省文書には、廃棄物処理法第1条で明記されている「再生」が含まれていないので、リサイクル施設に廃棄物を運搬する場合は運送業許可必要なのだ!」という、またもやトンデモ解釈が跳梁跋扈することになります。

言うまでもないことですが、「廃棄物の再生」は、業許可の区分としては、「廃棄物の処分」に含まれますので、

「再生施設への運搬は国土交通省解釈では運送業許可必要だ!」とはならず、

「再生施設への運搬も、国土交通省解釈にあてはまる場合は運送業許可不要と判断できる」と理解する方が自然です。


4.「包括的な委託契約」の必要性

次に重要になるのが、国土交通省文書におけるもう一つの要件である

「包括的な委託契約に基づき」

という部分です。

ブログで取り上げる順番が前後してしまいましたが、国土交通省事務連絡に筆者が付記した①の部分を考察していきます。

 廃棄物(廃棄物の処理及び清掃に関する法律第2条第1項に規定するものをいう。)の運送に関しては、廃棄物行政を所管する環境省から、廃棄物処理の主たる業務は、廃棄物の収集及び処分業務であり、廃棄物の運搬業務はこれらの業務を完遂するために付帯する業務であるとの見解が示されたところです。このため、廃棄物処理業者が、発注者である市町村や排出事業者と締結した包括的な委託等契約に基づき廃棄物の運搬と、その他の廃棄物の処理(収集又は処分)を一体的に実施する場合において、当該委託等契約に基づく業務の一環として行われる運搬行為(※)については、自己の生業である廃棄物処理業務と密接不可分であり、その業務に付帯して行われる運送であるため、法の許可等を要しないものと解されます。

■これ、実は非常に重要な前提条件

運送業許可不要と判断するためには、

「収集運搬」が、

  • 積替保管場所への搬入
  • 処分(再生含む)場所への搬入

といった一連の廃棄物処理の流れの中で行われる必要があります。

「廃棄物の収集運搬」が、廃棄物処理の一環として行われるためには、

  • 一般廃棄物の場合であれば、市区町村との委託契約
  • 産業廃棄物の場合であれば、排出事業者との産業廃棄物処理委託契約

が当然不可欠となります。

こうして書くと「そんなの当たり前でしょ」と言われてしまいそうですが、

現実には、産業廃棄物中間処理業者が排出事業者となり、中間処理残さやリサイクル品を売却するケースがあります。

この場合、中間処理業者が中間処理残さを売却することは、中間処理業者自身の裁量で行うものであり、元々の産業廃棄物の排出事業者との委託契約に基づく行為ではありません。

つまり、こうしたケースでは、「排出事業者と締結した包括的な委託契約とは無関係な商取引」に該当しますので、国土交通省文書の適用対象外、すなわち残さを運搬する事業者(中間処理業者自身が運搬する場合を除く)には運送業許可必要と解釈せざるを得ません。

(この点は極めて重要な論点のため、別記事で具体事例を整理します)


■実務的な判断軸

具体的には、次のような構造になっているかが重要です。

  • 排出事業者(または市町村)
     ↓
  • 処理業者(収集運搬+処分を含む)
     ↓
  • その一環としての運搬

このように、

👉 廃棄物処理業務の中に運搬が内包されている構造

であれば、

👉 「付帯する運搬」と評価できます。


5.ここを誤ると全て崩れるポイント

👉 「収集運搬業の許可を持っている=貨物でも廃棄物でもなんでも運べる」

これは全く別の話です。

ここで問題となっているのは、

👉 運送業規制の適用有無

であり、

👉 廃棄物処理法上の許可とは別次元の論点です。


6.まとめ

今回のポイントを整理します。


👉 「運搬(収集又は処分)」は列挙ではない
👉 「収集」と「運搬」は本来一体の行為
👉 「包括契約」と「一体的実施」が判断の軸
👉 運搬が主になると運送業評価に転ぶ


つまり、

👉 制度は、文言だけで理解するものではなく、「構造」で理解する。

これが最も重要です。


次回予告(第6回)

本来不要であるにもかかわらず、

👉 運送業許可(青ナンバー)を取得した場合、
👉 どれだけのコストが発生するのか

実際の相場ベースで整理します。


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