この記事はシリーズ記事です。
第1回 「一般廃棄物収集運搬業に貨物自動車運送事業法は当然に適用されるのか?」
前回の記事では、
国土交通省が法令適用事前確認手続において示した回答内容を整理し、
- 「適用対象となりうる」という表現の意味
- 回答が司法判断を拘束するものではないこと
- 個別事案を前提とした見解であること
などを確認しました。
今回は、その回答の中でも特に重要な部分、
すなわち 「貨物自動車運送事業法の許可が不要となる場合」 として示された条件について考察します。
国土交通省が示した「適用対象外」の条件
国土交通省の回答には、次のような記述があります。
廃棄物処理事業者が自ら処理施設を保有し処理まで行うものであり、
当該運送行為が廃棄物処理業の一環として密接不可分で、
その業務の過程に包摂され、独立性を有しない場合には、
貨物自動車運送事業法第3条の適用対象とならないと考えられる。
「貨物自動車運送事業法の許可が不要となる条件」として、非常に重要な内容です。
整理すると、次の三つの要素が挙げられています。
① 廃棄物処理業者自身が処理施設を保有している
② 運送行為が処理業の一環として密接不可分である
③ 運送行為が独立性を有しない
処理施設を保有していないと運送業の許可対象になる?
まず前提条件として、
「処理施設を保有していること」は法律上の要件ではなく、国土交通省の法律解釈
ということを押えておく必要があります。
貨物自動車運送事業法の条文には、「処理施設を保有している場合は許可適用除外」という規定は存在しません。
あくまでも、「一般廃棄物処理施設を自社で保有しているならば、運送業主体ではなく、一般廃棄物処分業主体とみなせるよね」という「国土交通省解釈の表明」と位置付ける必要があります。
そのため、筆者個人の見解としては、
「処理施設の自社保有」という条件は、「備えていた方が望ましい条件であることは間違いない」が、それを「必須の要件とみなすことは少々偏狭に過ぎる」と考えています。
実際のところ、一般廃棄物処理施設を自社保有している企業となると、各地に存在している一般廃棄物収集運搬業者のごく一部しかあてはまりませんので、この要件を「必須」とみなすことは現実的にはかなり無理があります。
おそらく、そのような一般廃棄物処理業者は、各都道府県内に10社もおらず、市町村内では皆無というところがほとんどです。
国土交通省にとっても、廃棄物処理施設の自社保有のみに拘泥する必要性はほぼ無いと思われますので、ここはひとまず「あったらいいな要件」として、次の判断要素の検討に移らせていただきます。
実務的に重要な判断要素は、その後に続く
- 密接不可分
- 独立性を有しない
という概念です。
「密接不可分・独立性なし」の意味するところ
「密接不可分」と「独立性なし」を理解するためには、廃棄物が処理されていく工程を押えておく必要があります。
廃棄物処理は、
排出・保管場所
↓
収集
↓
運搬
↓
中間処理
↓
最終処分
※ 収集運搬は処理工程の一部であり、処理委託契約の履行に不可欠の工程
という一連の工程として構成されています。
また、産業廃棄物の場合であれば、
排出事業者が収集運搬業者と締結する契約は「産業廃棄物収集運搬委託契約」ですが、排出事業者が別途契約をした処分業者のところに、排出事業者の産業廃棄物を搬入する契約となり、ほとんどの収集運搬委託契約は、「産業廃棄物処分委託契約」と別個独立には存在せず、
排出事業者に課された「産業廃棄物の処理責任」を完遂するために、まさに密接不可分な契約です。
つまり、廃棄物処理施設を自社保有しているかどうかに関係なく、廃棄物収集運搬業者は、
- 廃棄物を処分するために密接不可分な工程として運搬を行っており
- 独立した運送事業として行っているわけではない
ことは間違いありません。
※ただし、現実には、処分業者への搬入を目的としない「販売を目的とした運搬だが、運送費の方が高くつく取引」、いわゆる「到着時有価物の逆有償運搬」がありますので、この場合の整理は別の記事で行います。
ここで仮に、一般廃棄物収集運搬業をすべて貨物運送事業とすると、
- 廃棄物処理法の許可
- 貨物自動車運送事業法の許可
という 二重許可 が必要になります。
しかし、廃棄物処理法は
- 適正処理
- 不法投棄防止
- 排出事業者責任
を中心として設計された制度です。
一方、貨物自動車運送事業法は
- 輸送秩序
- 交通安全
- 運賃の適正化
を目的とする法律です。
このように 制度目的が異なる ため、両者をそのまま重ねると制度の衝突が起きます。
そこで(国土交通省の)行政実務では、
廃棄物運搬を、独立した物流事業ではなく、処理工程の一部
として整理してきたと考えられます。
その結果として示されたのが、「密接不可分」「独立性なし」という判断基準と考えることが可能です。
なぜこの整理が必要なのか
もし、廃棄物収集運搬業のすべてに、貨物自動車運送事業法を全面適用するとすれば、
- 許可要件
- 財産的基礎
- 事業計画審査
- 運賃規制
- 事業報告義務
などが追加で課されることになります。
日本の廃棄物処理業者の多くは中小企業ですが、もしこのような規制が一斉に適用されれば、業界構造そのものが大きく変わり、滞ってはならない一般廃棄物処理が止まってしまう可能性があります。
そのため、行政実務として、
このような制度衝突を避けるための整理が行われてきたと考えるのが自然と思います。
今回のまとめ
「密接不可分」「独立性なし」という判断基準は、
廃棄物の運搬が
処理工程の一部として行われているのか、
それとも独立した物流として行われているのか
という視点から理解すると整理しやすくなります。
少なくとも、廃棄物処理工程の一部として行われる通常の収集運搬については、貨物自動車運送事業法の対象となるものではないと整理することが可能と思われます。




