以前、Xで産業廃棄物処理委託契約書への許可証の写しの添付義務について投稿したところ、フォロワーの方から次のようなご質問をいただきました。
後日ブログで回答するとお約束していましたが、廃棄物処理法施行令改正その他の記事の執筆を優先していたため、解説記事の執筆が遅くなってしまいました。
今回は、いただいたご質問を紹介しながら、契約書の写しの取扱いと、許可証の写しの管理方針について解説します。
1.契約書の写しは「契約書」ではないのか?
まず、最初のご質問です。
一度整理してみたいのですが、契約書の写しは契約書でしょうか?
いや、写しなのだから契約書じゃないと思えますが、
ならば、契約書の写しを契約書の「記録」として保管する場合、「許可証の写し」の添付は不要。
という整理でよろしいでしょうか。
確かに、契約書の原本と、そのコピーである写しは、物理的には別の文書です。
以下、この記事では、契約書の原本が別に存在し、当事者間で書面による委託契約が適法に締結されていることを前提とします。
契約書の写しは原本そのものではありませんが、原本の内容を再現したものであり、契約内容を確認するための資料となります。
では、契約書の原本ではなく写しだけを保存する場合には、許可証の写しを添付する必要がなくなるのか?
契約内容を確認するための手元資料として、「契約書の写し」だけを別途ファイリングするような場合なら、そのように考える余地があるかもしれません。
しかし、委託基準の一環として、「委託基準に基づく委託契約書の保存義務を履行したことを対外的に証明するため」に、「委託契約書原本」の代わりに「委託契約書の写し」を保存するのであれば、話は変わります。
産業廃棄物の処理委託については、書面による委託契約が義務付けられ、その契約書には許可証の写し等の添付が義務付けられているからです(廃棄物処理法施行令第6条の2第四号、同法施行規則第8条の4)。
さらに、同施行令第6条の2第五号では、第四号に規定する「委託契約書及び書面」を、契約終了の日から5年間保存することが義務付けられています。
ここでいう「書面」には、許可証の写し等の添付書類も含まれます。
つまり、廃棄物処理法は契約書だけでなく、その添付書類についても保存を要求しているのです。
この保存義務の目的は、過去の委託について、法令に適合した契約が締結されていたかどうかを事後的に検証できるようにすることにあると考えられます。
いわば、排出事業者のアカウンタビリティ(説明責任)を確保するための制度です。
契約書の本文だけが残っていても、委託先がどのような許可を有していたのか確認できなければ、適法な委託であったことを十分に検証できません。
したがって、契約書原本の代わりとして、契約書の写しを保管する場合は、契約書の添付書類として許可証の写しの保存も不可欠となります。
2.許可証の写しを添付する本来の目的
そもそも、なぜ産業廃棄物処理委託契約書に許可証の写しを添付する必要があるのでしょうか。
それは、委託先が必要な許可を有しており、委託しようとする産業廃棄物の処理が、その許可された事業の範囲に含まれていることを、排出事業者に確認させるためです。
適法に産業廃棄物の処理を委託できる相手であることを確認するための手段として、許可証の写しの添付が不可欠なのです。
この趣旨を踏まえれば、契約書の原本か写しかという形式的な区別だけで、許可証の写しの必要性が左右されるものではないことがわかります。
3.有効期間が切れた許可証の写しはどうするべきか?
続いて、2件目のコメントです。
法そのもので判断するのか、法の趣旨をもって指導するのか、許可証添付の現実的な必要性をもって判断するのか
役所は写しの契約書の許可証添付について、細かく見ていないのは(指導しないのは)、不要だからか、それとも…
まず、現在も取引を継続している委託先について、契約書に添付された許可証の有効期間が満了している場合を考えてみましょう。
この場合、契約の自動更新を重ねる間に、委託先業者の添付した許可証の有効期間が満了しているのであれば、許可更新後の最新の許可証の写しを入手し、契約書の添付書類をアップデートする必要があります。
もっとも、許可証に記載された有効期間が経過した瞬間に、その業者は直ちに無許可業者になるわけではありません。
許可の有効期間内に更新申請が行われた場合、更新許可または不許可の処分がなされるまでの間は、従前の許可が引き続き効力を有するためです(廃棄物処理法第14条第3項等)。
しかし、実際には、すべての産業廃棄物処理業者が必ず許可を更新するとは限らず、意図的、あるいは手続きの必要性の失念等の理由で、更新申請を行わない事業者も存在します。
その場合、更新申請をしていない以上、有効期間の満了によって許可の効力が失われます。
それにもかかわらず、排出事業者が従前の許可証だけを信用し、無許可状態になった業者への委託を継続すれば、重大な委託基準違反(無許可業者への委託)につながります。
有効期間が切れた許可証の写しを添付したままであることが、直ちに委託基準違反になる訳ではありませんが、許可の更新状況を確認しないことは、無許可業者への委託を見逃す危険性を高めます。
そのため、許可の有効期間が満了する際には、更新申請の状況を確認し、更新許可後に新しい許可証の写しを入手することが重要です。
なお、更新前の許可証の写しを、過去の委託状況を確認するための資料として残しておくことにも意味があります。
古い許可証をすべて廃棄する必要はなく、現在の許可証と過去の許可証を区別して管理すればよいでしょう。
また、最新の許可証の写しを契約書とは別に保管している場合、物理的に契約書へ綴じ直さなければならないかという問題もあります。
法令上の添付義務を踏まえれば、契約書と許可証の対応関係が明確で、必要なときに一体として確認できる状態にしておく方が望ましいため、新しい許可証写しへの差し替えか追加保存することをお奨めします。
4.行政が指導しないのは、法的に重要ではないから?
ご質問には、行政が契約書の写しや許可証の添付状況を細かく確認しないのは、そもそも重要ではないからなのか、という疑問も含まれています。
私は、重要ではないから添付状況を確認していないわけではなく、
行政職員の全員が、契約法務や産業廃棄物の委託実務に精通しているわけではないから、という単純な理由を考えています。
私自身、行政職員として廃棄物規制に携わった経験がありますが、行政職員も人間である以上、それぞれに得意分野と不得意分野があります。
処理施設の構造や維持管理に詳しい職員もいれば、許可申請や行政処分に詳しい職員もいます。
すべての職員が、委託契約書の内容や添付書類の取扱いについて、同じ水準の知識を持っているわけでは決してありませんし、実情としては、それらの方面の知識が豊富な職員の方が少ないと思います。
また、立入検査では多数の確認事項があるため、限られた時間の中で優先順位を付けて確認する必要もあります。
そのため、行政官が細かく見ないポイントだからといって、見られなかった箇所が適法であったと確定するわけでもありません。
※逆に、行政から指導された事項がすべて、法令上の義務や罰則に直結するわけでもありません。
行政の指導内容についても、法令上の根拠と、適正処理を確保するための実務上の必要性を区別して考えることが重要です。
5.行政に指摘されるかどうかよりも重要なこと
産業廃棄物処理委託契約書への許可証の写しの添付義務も、契約書及び添付書類の保存義務も、適法な委託関係を確保し、事後的な検証を可能にするための仕組みと言えます。
排出事業者にとって重要なことは、
- 現在の委託先が必要な許可を有していることを確認し
- その確認結果を後から説明できる状態にしておくこと
です。
許可証の写しは、そのための重要な資料です。
行政から指摘されないことと、委託基準を遵守できているかは別問題と言えます。
書類の形式だけでなく、なぜその書類の作成や保存が義務付けられているのかを理解しておくことが、委託基準違反を防ぐための基本と考えます。
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