産業廃棄物の再委託は、どのような手続きで行うのか?

問題提起:再委託に関する疑問

毎週廃棄物処理実務に関するクイズを出題している「廃棄物実務クエスト」で、
先週、「排出事業者が委託契約書であらかじめ再委託に同意していれば、処理業者はその都度承諾を得なくても、自由に再委託できる?」というクイズを出題したところです。

クイズの回答としては

A:廃棄物処理法で認められた再委託の方法とは異なるため、契約書による事前の包括的な承諾だけでは、再委託は認められないと考えられます。

となりますが、これまで発出されてきた過去の通知では、肝心の再委託の具体的な方法が、それほど明確には解説されていません。

そのため、次のような疑問を持った方が多いと思います。

そもそも、排出事業者ではない産業廃棄物処理業者が、何の権原に基づいて、他人から委託された産業廃棄物の処理を別の処理業者に委託できるのか?

あるいは、再委託が行われた場合、元々の排出事業者はどのような立場になるのか?

そして、排出事業者と再委託先の処理業者との間に、直接の契約関係は生じるのか?

これらの問題について、廃棄物処理法は、条文上では明確な説明を用意していません。

そこで今回は、再委託の手順を確認したうえで、民法上の復委任や請負契約の下請と比較しながら、再委託という法律関係の構造を考察してみます。

1.産業廃棄物の再委託は原則として禁止されている

産業廃棄物処理業者による再委託は、原則として禁止されています(廃棄物処理法第14条第16項)。

ただし、例外措置として、政令で定める基準に従って他人に委託する場合のみ、再委託が認められています。

その基準を定めているのが、廃棄物処理法施行令第6条の12です。

廃棄物処理法施行令第6条の12(産業廃棄物収集運搬業者又は産業廃棄物処分業者の産業廃棄物の収集若しくは運搬又は処分等の再委託の基準) 

 法第14条第16項ただし書の政令で定める基準は、次のとおりとする。

一 あらかじめ、事業者から受託した産業廃棄物の運搬又は処分若しくは再生を委託しようとする者(以下「再受託者」という。)の氏名又は名称(法人にあつては、その代表者の氏名を含む。)及び当該委託が第6条の2第一号又は第二号に掲げる基準に適合するものであることを当該事業者(事業者が法第12条の7第1項の認定を受けた者である場合にあつては、当該認定を受けた者の全て。以下この号において同じ。)に対して明らかにし、当該委託について当該事業者の書面(環境省令で定める事項が記載されたものに限る。)による承諾を受けていること。

二 再受託者に当該産業廃棄物を引き渡す際には、その受託に係る契約書に記載されている第6条の2第四号イからハまで及びホに掲げる事項を記載した文書を再受託者に交付すること。
(※筆者注 第6条の2第四号イ「委託する産業廃棄物の種類及び数量」、ロ「運搬の最終目的地の所在地」、ハ「処分又は再生の場所の所在地、その処分又は再生の方法及びその処分又は再生に係る施設の処理能力」、ホ「処分(最終処分を除く。)を委託するときは、当該産業廃棄物に係る最終処分の場所の所在地、最終処分の方法及び最終処分に係る施設の処理能力」を指します)

三 法第十五条の四の五第一項の許可を受けて輸入された廃棄物の処分又は再生を委託しないこと。

四 前三号に定めるもののほか、第六条の二第一号、第二号、第四号及び第五号の規定の例によること。
(※筆者注 第四号は「許可業者への委託」や「委託契約書の法定記載事項」等の委託基準を指します)

同条第一号では、再委託に先立ち、再受託者に関する情報や、再委託が所定の基準に適合することを排出事業者に明らかにし、その再委託について書面による承諾を受けることが求められています。

さらに、承諾書には環境省令で定める事項を記載しなければなりません(廃棄物処理法施行規則第10条の6の6)。

つまり、処理業者同士が合意しただけでは、適法な再委託にはなりません。

元々の排出事業者による承諾が、再委託を適法に行うための不可欠な要件となっています。

2.再委託はどのような手順で行われるのか

例えば、次の三者を想定します。

  • A社:産業廃棄物の排出事業者
  • B社:A社から処理を受託した処理業者
  • C社:B社から再委託を受ける処理業者

当初、A社とB社の間には産業廃棄物処理委託契約が成立しています。

B社は、この契約に基づいて産業廃棄物を適正に処理する義務を負っています。

ところが、B社の処理施設に故障が発生し、受託した産業廃棄物を予定どおり処理できなくなったとします。

そこでB社が、別の処理業者C社に処理を依頼しようと考えました。

この場合、通常は次のような手順を踏むことになります。

① 再委託の必要性を検討する

まず、B社は自社での処理が困難となった事情を整理します。

再委託は、通常の処理委託を自由に他社へ振り替えるための制度ではありません。

そもそも再委託が必要なのか、A社がC社へ直接委託する方法を採れないのかも検討すべきでしょう。

② 再受託者を選定する

次に、B社はC社の許可内容や処理能力を確認します。

C社が対象となる産業廃棄物を適法に処理できなければ、再委託は成立しません。

③ 元々の排出事業者から書面承諾を受ける

B社は、予定する再委託の内容をA社に説明し、書面による承諾を求めます。

A社は、再委託先や委託内容を確認したうえで、承諾するかどうかを判断します。

ここで重要なのは、A社が承諾する対象は、単なる「再委託という行為一般」ではないということです。

具体的に予定されている再委託、つまりA社は、B社に委託した産業廃棄物のうち、B社がまだ処理していないものについて、C社への再委託を承諾するかどうかを判断するのです。

④ B社とC社が再委託契約を締結する

A社の承諾を得たうえで、B社とC社の間で再委託に関する契約関係を整えます。

再委託に必要な法定基準を満たし、C社による処理を実施します。

3.再委託契約の「委託者」は誰なのか

ここからが今回の本題です。

A社とB社の間では、A社が委託者であり、B社が受託者です。

ところが、B社とC社の間では、B社が委託者となり、C社が受託者となります。

したがって、再委託契約における委託者はB社です。

一方、廃棄物処理法施行令第6条の12第一号が承諾を求めている相手は、元々の排出事業者であるA社です。

ここで、二つの異なる立場が登場します。

一つは、再委託契約を締結する「契約上の委託者」です。

もう一つは、再委託を承諾する「元々の排出事業者」です。

両者は同一ではありません。

排出事業者であるA社は、B社とC社の再委託契約の当事者にはなりません。

しかしながら、A社の承諾がなければ、B社は適法に再委託できないという構造になります。

このような当事者の法的地位や関係性の複雑さが、再委託の仕組みを正確に理解する上での妨げになっているように思います。

4.再委託しても、元々の排出事業者は変わらない

B社がC社に再委託したからといって、B社がその産業廃棄物の排出事業者になるわけではありません。

A社が排出した産業廃棄物であるという事実は変わりません。

また、A社がB社に処理を委託したという当初の契約関係も、再委託によって当然に消滅するものではありません。

つまり、再委託が行われた場合、次の関係が併存することになります。

A社とB社の関係

当初の産業廃棄物処理委託契約に基づく関係です。

B社とC社の関係

新たに成立する再委託契約に基づく関係です。

A社とC社の関係

原則として、両者の間に直接の契約関係はありません。

ただし、A社はC社への再委託を承諾する立場にあります。

また、A社は再委託を承諾したからといって、排出事業者としての責任から当然に解放されるわけではありません(廃棄物処理法第3条第1項、第12条第7項)。

A社がC社との直接契約を締結していなくても、排出事業者として求められる適正処理確保の責務がなくなるわけではありません。

反対に、A社が排出事業者だからといって、C社に対して当然にあらゆる契約上の請求権を持つわけでもありません。

次回予告:再委託者は何の権原で再委託できるのか?

ここまで、再委託の手順と、再委託に関係する三者の法的地位を整理しました。

次回は、そもそも排出事業者ではないB社が、何の権原に基づいてC社に再委託できるのかという問題について、民法上の復委任や請負契約の下請と比較しながら考察します。

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