【連載1】廃棄物処理法改正のパブコメ回答から読み解く「改正の方向性」|不適正スクラップヤード対策編

廃棄物処理法の改正に向けた意見具申案に対するパブリックコメントが実施され、その結果(御意見の概要及び御意見に対する事務局回答)が公表されました。

2026年4月7日付 環境省公表 「中央環境審議会意見具申「今後の廃棄物処理制度のあり方について」について

パブコメで集まった意見は多岐にわたりますが、環境省(事務局)の回答には、改正案の現時点における方向性が凝縮されています。

本連載では3回にわたり、「1.不適正スクラップヤード対策」「2.PCB廃棄物に係る対応」「3.災害廃棄物への対応」の各テーマについて、回答を読み解きながら改正の方向性を整理します。

第1回は「不適正スクラップヤード対策」です。


金属スクラップヤードへの「許可制」導入はほぼ確定

パブコメ回答を通じて最も明確に読み取れるのが、金属スクラップや雑品スクラップ等の保管・処分を業として行う者への許可制(事前審査制度)の導入です。

そう考えた理由は、事務局が複数の設問で同一の表現を繰り返しており、例外を設ける余地を示していないことにあります。

たとえば、事務局(環境省)回答では、

許可制の対象を「金属やプラスチックが含まれる使用済みの物品の保管・処分を業として行う場合」と繰り返し明記しており、この方向性はほぼ揺るぎないものと考えられます。

許可制の具体的な内容として検討されていることは、以下のとおりです。

許可要件:設備・構造の基準だけでなく、申請者の過去の法令違反歴や、継続して適切に事業を行う能力も審査対象とする方向です(質問No.15への回答)。設備さえ整えれば許可が下りる、という設計にはしない意向が明確に示されています。

立入検査・是正権限:廃棄物処理業の許可制度を参考に、行政による立入検査、勧告、命令(是正・事業停止等)、行政代執行を盛り込む方向です(質問No.29への回答)。

更新制:廃棄物処理業許可が更新制であることを参考に、定期的な確認制度を設ける方向です(質問No.31への回答)。

猶予期間:既存事業者の準備を考慮し、新制度施行まで十分な経過措置を設けることが明示されています(質問No.21への回答)。


「鉄スクラップ除外」の主張には応じない方向

業界からは「鉄スクラップは製鉄の主要原料であり廃棄物と性質が異なるため除外すべき」「雑品を扱う業者のみを規制すべき」という意見が複数寄せられました(質問No.14、No.37等)。

しかし事務局の回答は「金属スクラップや雑品スクラップ等の金属やプラスチックが含まれる使用済みの物品を制度の対象とすることを検討している」という立場を崩していません。

製鉄事業者・精錬事業者への「過度な負担とならないよう検討する」という配慮は示しつつも、対象から鉄スクラップ等を丸ごと外すという方向性は採用されていないと読むべきでしょう。


既存の廃棄物処理業許可を持つ事業者への配慮

事業者にとって重要なのは、すでに廃棄物処理業の許可を持っている業者への配慮です。

事務局は「過度な負担とならないよう検討する」という立場を繰り返しており、廃棄物処理業者等に対して二重規制とならない仕組みを模索していることが伺えます。

ただし、「条例による許可を取得済みであることを理由に法律上の許可申請を不要とすることは法制度上困難」とも明言しており(質問No.18への回答)、既存の条例許可が新法上の許可と完全に代替されるわけではない点は注意が必要です。


帳簿記載義務によるトレーサビリティの確保

有価物であるスクラップに廃棄物のマニフェスト制度を適用すべきという意見に対し、事務局は「産業廃棄物における排出事業者責任は有価物には適用されない」と明確に否定した上で、「帳簿への記載を義務付けること等によりトレーサビリティの仕組みを構築する措置を検討する」と回答しています(質問No.40、No.49への回答)。

マニフェスト制度の枠組みをそのまま有価物に持ち込むことはせず、帳簿記載義務という形でトレーサビリティを確保する方向性です。

受入先(原料の発生元)や処分先の明記を求める意見(質問No.26)については「帳簿の具体的な記載事項等については今後検討する」とされており、詳細は今後の政省令・ガイドラインで固まってくることになります。


使用済鉛蓄電池等の輸出:環境大臣の確認制度を導入へ

複数の意見で「スクラップの不適正輸出を防ぐための規制強化」が求められました。事務局は、使用済鉛蓄電池等について廃棄物処理法上の廃棄物の取扱いに準じて「国内処理原則」を適用し、輸出に際しては環境大臣の確認を受けることを義務化する方向を明示しています(質問No.27、No.35等への回答)。

ただし、この輸出確認制度の対象となる物品は、許可制の対象物品と必ずしも同一ではないと説明されており、品目ごとに規制の厚みが異なる設計になるものとみられます。


全国統一制度の創設と自治体への技術的支援

現行では自治体ごとに独自の条例でスクラップヤードを規制するケースが多く、地域差が大きい状態です。パブコメでも「全国で統一した公平な制度設計を求める」という意見が複数ありました。

廃棄物処理法で有価物である「金属・雑品スクラップ」を規制することの是非という、根本的な問題の議論が別途必要と考えていますが、少なくとも、廃棄物処理法という法律で規制をする以上、当然ながら、全国で画一的な規制基準が適用されていくことになります。

事務局は「全国で統一的な制度の創設について検討を進めていく」と明言した上で、「ガイドライン等による技術的助言や自治体間の情報共有の促進を行う」としています(質問No.23への回答)。

実際の許可・監視・指導の主体は各都道府県等になるものの、国が制度の骨格と運用指針を示す形になります。


まとめ:スクラップヤード対策で注目すべきポイント

  • 金属・雑品スクラップを扱う事業者への許可制導入は確実な方向
  • 鉄スクラップを対象から除外する方向性は採用されていない
  • 廃棄物処理業の許可等を既に持っている業者への配慮は検討される
  • 先行する独自条例に基づく許可業者が、改正後の廃棄物処理法に基づく許可申請対象から除外される可能性は非常に低い
  • マニフェスト制度は適用されず、帳簿記載義務による緩めのトレーサビリティ確保の方向
  • 使用済鉛蓄電池等の輸出に際して環境大臣の確認制度を導入
  • 十分な猶予期間を設けることが明示されている
  • 排出事業者にとっては、直ちに義務が増えるわけではないものの、「有価物であること」を理由に管理を緩めることは難しくなる

今回の改正案は、「廃棄物か有価物か」という従来の区分ではなく、「環境リスクを基準に規制する」という大きな構造転換のきっかけになる可能性があります。

次回(第2回)は「PCB廃棄物に係る対応」を取り上げます。

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