【筆者注釈 ここから】
2026年4月10日に、廃棄物処理法改正案が閣議決定されたことが環境省より発表されました。
本来であれば、パブコメ回答をこのタイミングで取り上げる必要性が無いのですが、3回の連載予定のうち2回分は既に掲載済みでしたので、最後の3回目記事も公開しておきます。
この後すぐ、別記事で閣議決定された廃棄物処理法改正案の詳細を検討する予定です。
【ここまで】
廃棄物処理法改正に向けた意見具申案のパブリックコメントの回答を読み解く本連載、最終回は「災害廃棄物への対応」です。
能登半島地震をはじめ、大規模災害が相次ぐなかで、災害廃棄物処理の制度的な基盤整備が急務となっています。今回の改正では、専門支援機関の法定化、民間事業者との連携強化、最終処分場での受入れ特例など、複数の制度的措置が一体で検討されています。パブコメ回答からその方向性を整理します。
専門支援機関の法定化:初動体制の強化が核心
今回の改正の「災害廃棄物」分野における大きなポイントの一つは、公費解体・災害廃棄物処理を横断的に調整支援する専門支援機関を法令上に位置付けることです。
パブコメでは「発災直後の初動対応が小規模自治体を中心に機能しないケースが多い」「D.Waste-Net等の支援枠組みを現場の運用に確実につなぐための仕組みが必要だ」といった意見が寄せられました。
事務局は、これらの課題を「専門支援機関からの自治体への支援等において対応していく」と回答しており(質問No.1、No.3への回答)、専門支援機関が実際にどのような機能を担うかが法改正の重要な論点となります。
具体的な支援内容として想定されているのは、初動の連絡窓口・派遣要件・役割分担の明確化、分別区分・住民周知のテンプレートの整備・統一、協定締結や運用に関する事例紹介や研修の実施などです(質問No.3、No.9への回答)。
民間事業者との災害支援協定締結の努力義務化
「自治体と民間事業者・団体等との災害支援協定の締結の努力義務化」について、パブコメでは「協定締結や運用に関する具体的な事例紹介や研修等も併せて実施すべき」という要望が出されました。
事務局は、これを「専門支援機関からの自治体への支援内容に含めることを検討する」と回答しており(質問No.9への回答)、制度の実効性を高めるための周知・研修が専門支援機関の業務として位置づけられる方向です。
再委託の要件:政省令で明確化へ
災害廃棄物処理における再委託について、「安易な再委託による不適正処理を防ぐため、再委託先の要件を明確化すべき」という意見が出されました。
事務局は「再委託先の要件については、今後の法改正、政令・省令の改正において適切に措置する」と回答しており(質問No.1、No.8への回答)、政省令レベルで再委託要件が整備される見通しです。
なお、「通常時と非常災害時で再委託のルールを分けて整理すべき」という意見も出ており、災害時特有の再委託の考え方が制度上明確になる見通しです。
民間最終処分場での災害廃棄物受入れ:特例制度の創設へ
大規模災害時に民間の最終処分場が災害廃棄物を受け入れやすくするための特例制度の創設が検討されています。
パブコメでは「最終処分場だけでなく中間処理施設も対象に含めるべき」という意見が出されましたが、事務局は「本意見具申案では民間最終処分場での受入れ促進のための制度的措置が必要とされている」と応じるにとどめており(質問No.1への回答)、現時点では最終処分場が主たる対象となる模様です。
また、特例制度の適用にあたっての生活環境影響調査・公告縦覧等の手続きについては「法改正、政令・省令の改正において適切に措置する」とされており(質問No.2への回答)、手続の簡略化が進む可能性があります。
一般廃棄物処理計画への災害廃棄物関連事項の追加
「災害廃棄物処理と密接に関係する仮設トイレ設置・し尿処理についても、トイレ計画を災害廃棄物処理計画の中に位置づけるべき」という意見に対して、事務局は「一般廃棄物処理計画中の災害廃棄物に関する事項の追加においても、し尿収集等を含めた記載を位置づけることを想定している」と回答しています(質問No.2への回答)。
法改正により、一般廃棄物処理計画において災害廃棄物に関する事項が明示的に位置づけられることになります。
自治体の廃棄物担当部署は、法改正後は、一般廃棄物処理計画上に上記の事項を位置づける必要が出てきます。
災害廃棄物処理における費用・労務の考え方
「災害対応時の労務単価や車両費に関する明確な基準が存在しない自治体もある」という指摘が出ました。
事務局は新たな基準の策定には踏み込まず、「令和4年4月付けの廃棄物適正処理推進課長通知を参考に検討されたい」と既存通知を案内するにとどめています(質問No.5への回答)。
「災害ビジネス」化を防ぎながら適正な費用を確保するという難しいバランスの問題であり、現時点では国として一律の基準を示すことは困難という立場です。
民間事業者が自治体と協定を締結する際には、費用の考え方を事前に確認しておくことが重要となります。
まとめ:災害廃棄物対応で注目すべきポイント
- 専門支援機関の法定化により、初動体制・自治体支援の制度的基盤を整備
- 民間事業者との災害支援協定締結が自治体の努力義務となる方向
- 再委託要件は政省令で明確化(通常時・非常時で整理される見通し)
- 民間最終処分場での災害廃棄物受入れ特例制度を創設(手続の簡略化を含む)
- 一般廃棄物処理計画に災害廃棄物・し尿処理関連事項を追加
連載を振り返って
3回にわたり、廃棄物処理法改正に向けたパブコメ回答から読み取れる改正の方向性を整理しました。
今回の改正は「不適正スクラップヤード対策」「PCB廃棄物対応」「災害廃棄物対応」という性格の異なる3テーマが一体で進んでいます。影響を受ける事業者の層も幅広く、ヤード業者・廃棄物処理業者・排出事業者・自治体のそれぞれに対して、今から準備すべき論点があります。
法改正の詳細は今後の法案提出・国会審議を通じて明らかになります。本ブログでは、法改正の進捗に合わせて引き続き解説を行ってまいります。
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