従業員が不法投棄すると会社はどうなる?─両罰規定・欠格要件・許可取消の仕組み

2025年7月、熊本県内の残土置場において、産業廃棄物処理業者の従業員2名が、コンクリート片を投棄したとして、廃棄物処理法違反(投棄禁止)の疑いで逮捕されました。

投棄場所および使用車両がいずれも当該処理業者の所有であったことから、警察は関与の有無を調べるため会社への家宅捜索を実施しています。

本稿執筆時点では、会社としての指示・組織的関与の有無は捜査中であり、確定した事実ではありません。

以下の分析のうち、「仮に会社の指示が明らかになった場合」に言及する部分は、あくまで制度上の帰結を検討する仮定の議論であり、本件について特定の結論を示唆するものではありません。

1. 事案の概要

報道によれば、容疑者2名は同じ産業廃棄物処理業者の従業員であり、共謀の上、当該処理業者の所有地に、廃棄物であるコンクリート片を投棄した疑いが持たれています。

投棄の態様は、一方がダンプカーで搬入し、他方がショベルカーで掘削した穴に埋め、土をかぶせるというものであったとされ、匿名の通報を受けた捜査員による張り込みの過程で確認されたと報じられています。

この時点で確認できる事実は、(1)投棄地・使用車両が会社所有であったこと、(2)会社に対する家宅捜索が行われたことの2点です。

これらは、現時点では、会社としての指示・認識を意味するものと確定してはいないことにご注意ください。

2. 統計から見る「許可業者による不法投棄」の実態

産業廃棄物処理業者の従業員が逮捕される報道に接し、許可処理業者による不法投棄は非常に多いのではないか?という印象を持った方がいらっしゃるかもしれません。

しかし、環境省が毎年度公表している「産業廃棄物の不法投棄等の状況」を見る限り、この印象は実態と一致しません。

直近となる令和6年度の場合は、投棄件数と投棄量の両方で最も多いのは「排出事業者」です。

許可業者による不法投棄は、件数と量ともに「排出事業者」よりも少ないことがわかります。

当ブログ 2025年12月22日付記事 「産業廃棄物の不法投棄等の状況(令和6年度)

もっとも、許可業者による不法投棄が皆無というわけではなく、また許可業者が関与した場合の投棄量は年度によって大きな比重を占めることもあります。

本件のように許可業者の従業員が実行者として逮捕される事案は、統計上は多数派ではないものの、稀有な例外とまでは言えません。

3. 仮に会社の指示が明らかになった場合の刑事罰適用可能性

本件について、仮に今後の捜査の結果、従業員の投棄行為が会社の指示ないし組織的な関与の下で行われたことが明らかになった場合、どのような刑事責任の構成があり得るかを整理します。

両罰規定による法人処罰

廃棄物処理法第16条は「何人も、みだりに廃棄物を捨ててはならない」と定めており、これに違反した者は第25条第1項第十四号により「5年以下の拘禁刑もしくは1000万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する」とされています。

この違反行為が「その法人の業務に関し」行われた場合、廃棄物処理法第32条第1項第一号の両罰規定により、行為者本人の処罰とは別に、法人は「3億円以下の罰金刑」の対象となります。

不法投棄・不法焼却に係る両罰規定の法定刑が3億円以下という高額に設定されているのは、過去の大規模不法投棄事案を契機とした法改正の経緯によるものであり、他の類型の違反(法人重科の対象外のもの)と比べて際立って重いと言えます。

4. 会社に刑事罰が科された場合の欠格要件該当

仮に前記の両罰規定に基づき法人が罰金刑(確定判決)を受けた場合、当該法人の産業廃棄物処理業・処分業の許可には、欠格要件を通じた重大な影響が及びます。

廃棄物処理法第7条第5項第四号ニは、「この法律その他生活環境の保全を目的とする法令等の規定に違反して罰金の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者」を、許可の欠格要件の一つとして定めています。

両罰規定(第32条第1項第一号)により法人が罰金刑に処せられた場合、当該法人はこの欠格要件に該当することになります。

この欠格要件該当は、産業廃棄物処理業の許可については第14条の3の2第1項第一号(一般廃棄物処理業については第7条の4第1項第一号)により、都道府県知事等が許可を「取り消さなければならない」とされる必要的取消事由です。

廃棄物処理法第14条の3の2第1項

 都道府県知事は、産業廃棄物収集運搬業者又は産業廃棄物処分業者が次の各号のいずれかに該当するときは、その許可を取り消さなければならない。
一 第14条第5項第二号イ(第7条第5項第四号ハ若しくはニ(第25条から第27条まで若しくは第32条第1項(第25条から第27条までの規定に係る部分に限る。)の規定により、又は暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律の規定に違反し、刑に処せられたことによる場合に限る。)又は同号チに係るものに限る。)又は第十四条第五項第二号ロ若しくはヘに該当するに至つたとき。
二~六 (略)

ここに裁量の余地はなく、欠格要件に該当するに至った以上、行政庁は取消処分を行う義務を負います。

取消後は5年間、新たな許可を受けることもできません。

なお、事業者側にも、自ら欠格要件に該当するに至ったことを知った日から一定期間内に都道府県知事等へ届け出る義務(第7条の2第4項等の準用規定)があり、届出を怠った場合には罰則の対象となり得ます。

5. 許可取消手続の進め方

不利益処分としての許可取消しは、原則として行政手続法上の適正手続を経る必要があります。同法第13条第1項第一号イは、許可等を取り消す不利益処分をしようとする場合には「聴聞」を行わなければならないと定めています。

しかし、欠格要件該当を理由とする取消は、この原則とは異なる重要な例外の対象となります。

すなわち、行政手続法第13条第2項第ニ号は、法令上必要とされる資格が失われるに至ったことが判明した場合において、その資格喪失の事実が裁判所の判決書その他の公的な文書により証明されたときは、同条第1項の意見陳述のための手続(聴聞及び弁明の機会の付与のいずれも)を要しない旨を定めています。

罰金刑(両罰規定に基づくものを含む)による欠格要件該当は、まさにこの例外に当たります。

法人が罰金の刑に処せられたという事実は確定判決という公的な文書によって客観的に証明されており、行政庁による事実認定に裁量の余地はありません。

したがって、この類型の欠格要件該当を理由とする許可取消しについては、聴聞を経ることなく実行されます。

ただし、聴聞が省略される場合であっても、行政手続法第14条に基づく理由の提示は必要とされており、取消処分の通知に際しては、いかなる事実がいかなる欠格要件(本件では第7条第5項第四号ニ)に該当するかが明示されることになります。

6. 一度の不法投棄で全国の許可を失う可能性

まず整理しておくべきは、複数の都道府県で許可を保有する処理業者が、罰金刑(第7条第5項第四号ニ)により欠格要件に該当した場合、この効果が他の都道府県における同一法人(以下「A社」)の許可にどう及ぶか、という点です。

罰金刑に処せられたという事実はA社自身に帰属する事実であり、第7条第5項第四号ニの欠格要件に該当する以上、A社が許可を保有するすべての都道府県において、すべての業許可が取り消されることになります。

実際には、これらの都道府県が取消処分の根拠として用いる欠格要件は、必ずしも第7条第5項第四号ニだけに限定されるわけではありません。

廃棄物処理法第7条第5項第四号ホは、他の都道府県知事等から許可を取り消され、その取消しの日から5年を経過しない者も、欠格要件の一つとして定めています。

廃棄物処理法第7条第5項第四号 申請者が次のいずれにも該当しないこと。

イ~ハ (略)
ニ この法律、浄化槽法その他生活環境の保全を目的とする法令で政令で定めるもの若しくはこれらの法令に基づく処分若しくは暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(第32条の3第7項及び第32条の11第1項を除く。)の規定に違反し、又は刑法第204条、第206条、第208条、第208条の2、第222条若しくは第247条の罪若しくは暴力行為等処罰ニ関スル法律の罪を犯し、罰金の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなつた日から5年を経過しない者
ホ 第7条の4第1項(第四号に係る部分を除く。)若しくは第2項若しくは第14条の3の2第1項(第四号に係る部分を除く。)若しくは第2項(これらの規定を第十四条の六において読み替えて準用する場合を含む。)又は浄化槽法第41条第2項の規定により許可を取り消され、その取消しの日から5年を経過しない者(当該許可を取り消された者が法人である場合(第7条の4第1項第三号又は第14条の3の2第1項第三号(第14条の6において準用する場合を含む。)に該当することにより許可が取り消された場合を除く。)においては、当該取消しの処分に係る行政手続法第15条の規定による通知があつた日前60日以内に当該法人の役員(業務を執行する社員、取締役、執行役又はこれらに準ずる者をいい、相談役、顧問その他いかなる名称を有する者であるかを問わず、法人に対し業務を執行する社員、取締役、執行役又はこれらに準ずる者と同等以上の支配力を有するものと認められる者を含む。以下この号、第8条の5第6項及び第14条第5項第二号ニにおいて同じ。)であつた者で当該取消しの日から5年を経過しないものを含む。)

したがって、A社が保有する複数の許可のうち、既に一つの都道府県で「第7条第5項第四号ニ」を根拠として取消処分が行われている場合、後に続く都道府県は、「(第7条第5項第四号)ニ」と「(第7条第5項第四号)ホ」のいずれを根拠としてもA社の欠格要件該当を認定できることになります。

実際にどちらの欠格要件を根拠として取消処分を行うかは、各都道府県の判断に委ねられています。

理論的には、各都道府県がそれぞれ独自に罰金刑の事実「(第7条第5項第四号)ニ」を認定して取り消すこともできますが、実務上は、いずれかの都道府県が先行して取消処分を行った場合、後続の都道府県はその取消処分の事実「(第7条第5項第四号)ホ」を根拠とすることを選好する傾向があります。

これは、行政手続法第13条第2項第ニ号が求める「資格喪失の事実が裁判所の判決書その他の公的な文書により証明されたとき」という要件について、
「(第7条第5項第四号)ホ」を根拠とする場合は、先行する都道府県が発した取消処分という事実そのものが当該処分庁の記録として当然に公的性を備えているのに対し、
「(第7条第5項第四号)ニ」を根拠とする場合は、確定判決書等を別途入手・確認する手間を要するためです。

証明の容易さという点で、後続の都道府県にとっては「(第7条第5項第四号)ホ」の活用が合理的な選択となります。

以上のように、A社が複数の都道府県で許可を保有していた場合に、不法投棄罪で罰金刑が科されてしまうと、、保有するすべての許可が失われる結果となります。

7. まとめ

本件は、本稿執筆時点ではなお捜査段階にあり、会社としての指示・組織的関与の有無は確定していません。

しかし、投棄地・使用車両が会社所有であったという事実、および会社への家宅捜索が行われたという事実を踏まえると、仮に今後の捜査を通じて会社の関与が明らかになった場合の法的帰結―両罰規定による法人処罰、欠格要件該当、許可の必要的取消、そして役員兼任を介した他法人への連鎖取消の可能性(連鎖取消については別の機会に解説します)―を整理しておくことには、実務上一定の意義があると考えています。

また、統計が示すとおり、許可業者による不法投棄は不法投棄事案全体の中では少数派に属します。

個別の逮捕報道に接する際には、これが業界全体の実態を代表するものではないという視点をお持ちいただき、冷静に制度の理解をしていただくことを期待します。

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