高濃度PCB廃棄物を無害化処理認定制度の対象に追加|JESCO事業終了後の処理体制整備

2026年8月20日に、「無害化処理に係る特例の対象となる一般廃棄物及び産業廃棄物の一部を改正する告示」及び「低濃度ポリ塩化ビフェニル廃棄物に係る無害化処理の内容等の基準等の一部を改正する告示」が公布されました。

2026年8月20日付 環境省発表 
「無害化処理に係る特例の対象となる一般廃棄物及び産業廃棄物の一部を改正する告示」及び「低濃度ポリ塩化ビフェニル廃棄物に係る無害化処理の内容等の基準等の一部を改正する告示」の公布について

■ 改正の趣旨

 廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和45年12月25日法律第137号。以下「廃棄物処理法」という。)第9条の10及び第15条の4の4の無害化処理認定制度は、ポリ塩化ビフェニル(以下「PCB」という。)等に汚染された廃棄物等を対象に、人の健康又は生活環境に係る被害を生ずるおそれがある性状等を高度な技術を用いて無害化する処理を行う者を個々に環境大臣が認定し、認定を受けた者については、同法に基づく廃棄物処理業及び施設設置に係る許可を得ることなく処理を業として行い、施設を設置することを可能とする制度です。 
 高濃度PCB廃棄物については、これまで国が事業を統括する中間貯蔵・環境安全事業株式会社による高濃度PCB廃棄物処理事業によって処理が行われてきましたが、大量に保管・使用されていた高濃度PCBの処理が大きく進展し、令和8年3月末で当該事業は終了しました。今後は廃屋の解体工事等により予期せず高濃度PCB廃棄物が発見され、少量ずつ散発的に処理する段階に移行するため、これらが長期的に保管されることがないよう、少量散発的に覚知されるものを長期的に安定して確実に処理する新たな処理体制が必要です。このような状況を踏まえ中央環境審議会循環型社会部会廃棄物処理制度小委員会において、令和8年4月に別紙のとおり意見具申がとりまとめられ、廃棄物処理法に基づく無害化認定制度の対象に高濃度PCB廃棄物を追加することや無害化設備に付加する前処理技術の基準追加を行うこと等が示されました。 
 以上を踏まえ、無害化処理に係る特例の対象となる一般廃棄物及び産業廃棄物(平成18年7月環境省告示第98号。以下「対象物の告示」という。)及び低濃度PCB廃棄物に係る無害化処理の内容等の基準等(平成21年11月環境省告示第69号。以下「基準の告示」という。)について、上記の中央環境審議会循環型社会部会廃棄物処理制度小委員会の意見具申を踏まえ、所要の改正を行うこととします。 

今回の改正は、2026年3月末に終了した中間貯蔵・環境安全事業株式会社(JESCO)による高濃度PCB廃棄物処理事業に代わる、新たな処理体制を整備するものです。

JESCO事業終了後=高濃度PCB廃棄物絶滅ではない

大量に保管・使用されていた高濃度PCB廃棄物の処理は、JESCOによる処理事業によって大きく進展しました。

その一方で、今後も廃屋の解体工事などに伴い、これまで把握されていなかった高濃度PCB廃棄物が予期せず発見される可能性があります。

今後の高濃度PCB廃棄物の処理フェーズは、大量の高濃度PCB廃棄物を集中的に処理する段階から、少量の廃棄物を散発的に処理する段階へと移行することになります。

そのためには、新たに発見される高濃度PCB廃棄物のJESCOに代わる処理先を確保する必要がありました。

高濃度PCB廃棄物を無害化処理認定制度の対象に追加

無害化処理認定制度は、高度な技術によってPCBなどの有害性を除去する者を環境大臣が認定する制度です。

認定を受けた者は、廃棄物処理法に基づく処理業の許可や処理施設の設置許可を受けることなく、認定された廃棄物の処理を行うことができます(廃棄物処理法第9条の10、第15条の4の4)。

従来、この制度によるPCB廃棄物の処理は、主として低濃度PCB廃棄物を対象としていました。

今回の改正により、これまで対象外だった高濃度の廃PCB等及びPCB汚染物も、無害化処理認定制度の対象に追加されました。

一般廃棄物についても、PCB原液、PCBを含む油、PCBが塗布、浸透、付着又は封入された物などが、新たに対象となります。

高濃度PCB廃棄物は前処理後に焼却

高濃度PCB廃棄物をそのまま通常の焼却施設へ投入できるようになったわけではありません。

今回の改正では、廃棄物の種類に応じ、PCBを一定濃度以下になるまで分別・除去したうえで焼却することが、無害化処理の基準とされました。

具体的には、高濃度PCBを使用したコンデンサーや安定器などを解体し、内部のPCB油を抜き取ったうえで、金属くずや汚染物を分別・洗浄します。

こうした前処理によってPCB濃度を所定の基準以下まで下げた後、既存の無害化処理認定施設で焼却または溶融処理する仕組みです。

主な基準は次のとおりです。

廃棄物の種類前処理後のPCB濃度基準
廃PCB及びPCBを含む廃油PCBの重量割合0.5%以下
汚泥、紙くず、木くず、繊維くずなどPCBを含む部分1kgにつき10万mg以下
PCBが付着又は封入された廃プラスチック類1kgにつき10万mg以下
金属くず、ガラスくず、陶磁器くず、コンクリートくずなどPCBを含む部分1kgにつき5,000mg以下

すなわち、今回整備されたのは、高濃度PCB廃棄物を前処理によって既存の無害化処理施設で受入れ可能な濃度まで下げ、その後に焼却する仕組みです。

高濃度PCB廃棄物の前処理方法

高濃度PCB廃棄物を処理する際には、まず、対象となる機器を洗浄可能な状態まで解体し、抜油及び分別を行います。

その後、部材を洗浄してPCB濃度を下げたうえで、焼却または溶融による無害化処理を行います。

環境省が紹介した実証試験では、PCBの99%が廃液中に回収され、その廃液中のPCB濃度は0.49%と計算されました。

今回の告示改正では、廃PCB及びPCBを含む廃油について、PCBの重量割合を0.5%以下としたうえで焼却することが、無害化処理の基準とされています。

また、環境省は、前処理だけを行う事業者を別に認めるのではなく、原則として、受入れから無害化処理までを一社で一貫して実施することを想定しています。

認定事業者に求められる管理基準も追加

高濃度PCB廃棄物を処理する無害化処理認定事業者には、前処理後の廃棄物が基準に適合していることを確認する試験を、6カ月に1回以上実施し、その結果を記録することが求められます。

また、高濃度PCB廃棄物と低濃度PCB廃棄物を同じ保管施設で保管する場合には、低濃度PCB廃棄物へ高濃度PCB廃棄物が混入しないための措置も必要です。

無害化処理認定の申請時には、実証試験で焼却施設へ投入した廃棄物が、所定の濃度基準に適合していたことを示す書類の添付も求められます。

今回の告示改正は、あくまでも受け皿の基準を設定しただけ

今回の改正は、高濃度PCB廃棄物を民間の無害化処理認定事業者が処理するための法的な枠組みを整備したものです。

告示の施行だけで、全国に高濃度PCB廃棄物の処理先がすぐに出現するわけではありません。

実際の処理体制が機能するためには、高濃度PCB廃棄物の前処理及び焼却について、環境大臣の認定を受ける事業者が現れる必要があります。

今後は、

  • 認定を申請する事業者があるか
  • 認定事業者が受け入れる高濃度PCB廃棄物の種類
  • 全国から認定事業者まで安全に搬入する収集運搬体制を確保できるか

等の条件が各地で整うかどうかが、重要なポイントとなります。

筆者の視点

今回の告示改正は、JESCO事業終了後の高濃度PCB廃棄物処理体制をいかに整備していくかが主眼となります。

実のところ、大量処理を終え、市場が最も小さくなった段階で新たな民間処理体制を整備することは、民間事業者にとっては、非常に判断が難しい設備投資となります。

その理由は、今後どれくらいの高濃度PCB廃棄物が発生するかまったく予想できず、むしろ、それほど大量には出ないという可能性の方が高いため、高額な設備投資費用を回収できる見込みが立ちにくいためです。

PCB特措法制定当初から、民間事業者を受け皿の一部として位置づけ、適切な競争を促しつつ、各事業者にPCB廃棄物処理の知見を積ませた方が、排出事業者と処理業者の双方に大きなメリットがあったのではないでしょうか?

まとめ

今回の告示改正により、JESCO事業終了後に発見される高濃度PCB廃棄物を、無害化処理認定制度によって処理する道が開かれました。

ただし、高濃度PCB廃棄物を通常の低濃度PCB廃棄物と同じように処理できるようになったわけではありません。

所定の濃度以下までPCBを分別・除去する前処理と、その適合性を確認する試験・記録が処理の前提となります。

今後、高濃度PCB廃棄物が新たに発見された場合には、「処理先の確保」と「処理先に廃棄物を渡すまでの適切な保管」の両方が必要となります。

なお、2027年4月1日に施行される、改正PCB特別措置法では、新たに高濃度PCB廃棄物であると判明した場合には、判明した日の属する月の翌月末日までに、その保管状況や保管場所等を都道府県知事へ届け出ることが義務付けられます。

また、高濃度PCB廃棄物に該当すると判明した日から起算して、5年を超えない範囲内において政令で定める期間内に、自ら処分(現実的にはほとんどの事業者にとって不可能ですが)し、または処分を委託することが義務付けられていることにご注意ください。

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