関連記事
スクラップヤード規制案の分析(第1回 規制背景と規制の全体像)
連載第2回は、「使用済金属・プラスチック物品の保管・再生基準(案)」という、スクラップヤード事業者にとって、今後の事業運営を大きく左右するテーマです。
基準案の詳細を分析する前に、「スクラップヤード規制に関し、政省令で詳細が決まる内容」、すなわち「政省令事項」と「ガイドラインの構想」について軽く見ておきます。
政省令事項
赤線で囲っている部分が、改正廃棄物処理法が、スクラップヤード規制の詳細に関する定義を政省令に委任している内容です。
まず、政令(廃棄物処理法施行令)に委任されている内容が、
- 「使用済金属・プラスチック物品の保管基準」
- 「使用済金属・プラスチック物品の再生・保管基準」
- 「使用済金属・プラスチック物品の保管業または再生業の許可を要しない事業場敷地面積の上限」
の3つです。
「スクラップヤード環境対策技術検討会」で、今後その詳細の議論が進められることになっています。
次に、省令(廃棄物処理法施行規則)に委任されている内容が、
- 「帳簿への記載事項」
- 「帳簿の保存方法」
- 「その他政令からさらに省令に委任された事項」
の3つです。
これらも、「スクラップヤード環境対策技術検討会」で、今後詳細な議論が進められることになっています。
※当ブログでは、次回第3回記事で解説する予定です。
つまり、上記の6点については、改正廃棄物処理法の条文を100万回読んでも理解できない(法律の条文には書かれていない内容なので)事項であり、政省令で詳細が定義されることを待つしかないテーマです。
保管業・再生業に関するガイドライン

今回の法改正は、廃棄物処理法の根幹に手を加える部分が大きいため、環境省は非常に丁寧に議論を進めているという印象です。
ガイドライン案も目次イメージから提示し、最終目標を検討会委員全員に共有しようという姿勢がうかがえます。
もちろん重要なことは、「目次」ではなく、「すぐに現場で使える分かりやすい解説」なのですが、全体構想を先に示すことにより、解説の肉付けのメリハリを付けやすくなりますので、大変有効な工夫だと思いました。
保管・再生基準(案)
「スクラップヤード環境対策技術検討会」で検討する「保管・再生基準案」の全体像は次のとおり

全部で8項目の検討が予定されています。
廃棄物処理法と先行条例との比較
「廃棄物」は、廃棄物処理法での「産業廃棄物の保管・処分基準」
「有害使用済機器」は、廃棄物処理法での「有害使用済機器の保管基準」
「条例の規制対象物」は、地方自治体が制定した先行条例での「スクラップヤード規制」
の該当の有無となります。
「火災・延焼防止」については、「有害使用済機器」と「条例の規制対象物」として基準が設けられていますが、「保管期間」は「産業廃棄物」のみに課された基準という違いがあります。
筆者の視点
近年のスクラップヤードで火災が発生することが多い状況を考慮すると、廃棄物処理法改正で新たに加わるスクラップヤード規制としては、「火災・延焼防止」はまず外せないと思います。
その一方で、基本的には有価物であることから、産業廃棄物のように「保管期間」が規制されることは無さそうです。
囲い

「囲いの設置」については、「産業廃棄物の保管基準」「有害使用済機器」「スクラップヤード条例」のすべてで課されている基準であるため、ほぼ確実に、今回の政省令改正でも基準の一つとして追加されることになりそうです。
一般的な「万能塀」等の「構造耐力上安全な囲い」を設置すればクリアできる基準です
掲示板
「掲示板の設置」も、「産業廃棄物の保管基準」「有害使用済機器」「スクラップヤード条例」のすべてで課されている基準であるため、今回の政省令改正で基準の一つとして確実に追加されることになりそうです。
掲示板の材質まで規定したスクラップヤード条例は無いようですので、これも対応がそれほど難しくない基準と思われます。
保管高さ
「保管高さ」も、「産業廃棄物の保管基準」「有害使用済機器」「スクラップヤード条例」のすべてで課されている基準であるため、今回の政省令改正で基準の一つとして追加されることになりそうです。
スクラップヤード条例では、「最大5m」という条例と、「単一素材のみの保管の場合は高さ上限なし」という条例の2パターンがあるようです。
これは実務的な影響が大きい規制基準となるため、今後の検討会では、
- 「屋外で容器を用いずに保管」する場合には、高さ制限(最大5mを想定)を設けるべきか?
- 「プラスチックだけ」または「金属スクラップだけ」といった単一素材の保管をする場合には、高さ制限をしなくても良いか?
という2点の論点に注目したいところです。
筆者の視点
景観や労働安全対策の観点からすると、高さ制限を一切設けないという手法は、近隣ステークホルダーにとっては好ましいものとは言えません。
5mというのも相当な高さですので、単一素材の保管であっても最大5mというわかりやすい基準にした方が、行政と事業者、そして近隣ステークホルダーにとっても望ましいように思います。
囲いに接する部分については、その接し方によって「保管高さ」と「勾配」を定めるという、廃棄物保管基準でお馴染みの基準案が提案されています。
③は、廃棄物処理法では見られない、新しい勾配基準の考え方となります。
次は、屋外で「保管容器を用いた保管」と、「サイコロ上に圧縮した場合の保管」の基準です。
物を高く積み上げるにつれ、それが崩れ、地盤に落下した衝撃はより大きくなりますので、「崩れにくい」サイコロ状だとしても、無制限に積み上げるとやはり危険と言わざるを得ません。
そのため、金属コンテナに保管する場合でもあっても、「最大5m」という高さ制限を設けることは妥当と思われます。
油水分離装置
「公共水域、土壌や地下水の汚染のおそれがある場合」とされていますが、スクラップヤードにおいて油の流出による水質・土壌・地下水汚染のおそれがない場合は、現実にはほとんどありません。
そのため、
- 地下浸透防止のための保管場所底面へのコンクリート敷設
- 汚水流出防止のための油水分離槽設置
は、実務上マストとなりそうです。
筆者の視点
油水分離槽を設置すること自体はそれほど難しい工事ではありません。
これからヤードを設置する事業者の場合、苦も無く対応できる構造基準です。
しかし、既設のヤード事業者の中には、油水分離槽(溜枡)を設置していない場合が多く、設置していた場合でも、メンテナンスが不十分なケースが多々ありますので、事業者の経営方針が如実に露となるポイントでもあります。
生活環境保全措置
騒音・振動・悪臭や病害虫の発生防止対策を主眼とする、生活環境保全措置の基準案です。
筆者の視点
廃棄物処理法の廃棄物に関する規制と同様に、抽象的な表現となっています。
これは、事業場が立地する環境によって、騒音振動対策や病害虫発生防止対策に差が生じるため、法令で一律に厳格に規制するよりは、現場ごとに最適な生活環境保全上の措置を求めていく方が現実的だからという側面があります。
現実には、「荷下ろしを静かに行う」「低騒音・振動型の重機を使用する」等の常識的な対応で足りることがほとんどかと思います。
区分保管の徹底と保管面積の制限
単一素材を個別に保管する場合は、やはり仕切り等を設置した上で延焼を防ぐ工夫が不可欠と考えられます。
事業者サイドにとっても、延焼で資産を全損することを考えると、仕切りの設置などは安い投資となりますので、「区分保管」については、問題なく受け入れられそうです。
筆者の視点
しかし、保管(単位)面積に上限を設けることに関しては、既存のスクラップヤード事業者からの反発が起きそうです。
なぜなら、彼らにとっては、「スクラップ品=仕入れた商品」であり、それを売却して初めて利益が発生する以上、最大限の保管面積と保管容積を確保できるかどうかが、死活問題となるからです。
よって、許可取得後に操業を続けるうちに、申請書で定めた保管エリアや保管量がおざなりになりやすくなるため、地方自治体の定期的な立入検査が不可欠となっていきます。
次回予告
第3回は「帳簿」に関し、資料3のスライド20以降を検討していきます。
📋 条文や資料は読めた。でも、自社ではどう判断すればよいのか?
「条文や通知を確認して対応したつもりだった。」──それでも、実務上の判断を誤るケースは決して珍しくありません。
顧問契約では、法令や通知、審議会資料の読み解きだけでなく、
「あなたの会社では、どう判断すべきか。」
という実務上の疑問にお答えしています。
- ✅ 法令改正のタイムリーな実務解説
- ✅ 委託契約書・マニフェストのレビュー
- ✅ 担当者からの個別相談に随時対応













