本稿は、第1回会合で示された検討事項を整理するものであり、今後の検討会で内容が修正される可能性があります。
令和8年7月27日、環境省は「スクラップヤード環境対策技術検討会」の第1回会合を開催し、資料一式を公開しました。
環境省 「スクラップヤード環境対策技術検討会について」
配付資料のうち、特に資料3「スクラップヤード規制に係る検討事項と論点整理」には、今後の政省令・ガイドライン策定の骨格となる論点が具体的に示されています。
本稿では、この第1回資料から読み取れる論点を整理します。
制度改正の背景
本検討会は、令和8年6月19日に公布された「廃棄物の処理及び清掃に関する法律等の一部を改正する法律」の施行に向けて設置されたものです。
同法は、使用を終了し収集された物品でその全部又は一部が金属又はプラスチックから成る「使用済金属・プラスチック物品」の保管又は再生を行う事業者に対し、都道府県知事の許可制を導入するものです(第24条の7、第24条の8、第24条の15、第24条の16関係)。
あわせて、平成29年改正で導入された有害使用済機器(家電4品目・小型家電28品目)の保管等届出制度は廃止され(第17条の2関係)、同制度の対象者は新たな許可制度に移行することとされています。
資料2によれば、改正の背景には、
- 一部のスクラップヤードにおける騒音・悪臭・水質土壌汚染・火災等の発生(環境省の令和7年度実態調査では全国4,625事業場のうち計275件の問題事案)
- 不適正な事業者が環境対策コストを抑えることで生じる競争環境の歪み
- 資源循環と経済安全保障の観点からの適正な資源循環の確保
が挙げられています。
あわせて、バーゼル法上の特定有害廃棄物等に該当する使用済鉛蓄電池や廃電子基板等については、国内再生原則を適用したうえで、輸出の際に環境大臣の確認を義務付ける制度も新設されました(第24条の20、第24条の21関係)。
無許可営業や無確認輸出等の違反に対しては、未遂罪・予備罪も含め、個人につき最大5年の拘禁刑若しくは1,000万円以下の罰金(併科あり)、法人につき最大3億円の罰金という、廃棄物処理法本体と同等の罰則が措置されています。
施行日は、公布日(令和8(2026)年6月19日)から2年6か月を超えない範囲内で政令で定める日、すなわち令和10(2028)年12月19日より前とされており、それまでに政省令の整備とガイドラインの策定を終える必要があります。
本検討会が扱うのは、まさにこの政省令・ガイドラインの実質的な中身です。
検討会の位置づけと検討事項
資料1の「スクラップヤード環境対策技術検討会設置要綱」によると、本検討会は令和6年度に開催された「ヤード環境対策検討会」、および令和6〜7年度の中央環境審議会循環型社会部会廃棄物処理制度小委員会での議論、さらに全国規模の実態調査・分析結果を踏まえ、制度の詳細を検討することを目的としています。
検討事項は(1)スクラップヤードで求められる保管・再生に関する基準、(2)ガイドラインの内容、(3)その他議論すべき事項、の3点とされていますが、議論の中心となるのは、下記の2つのテーマのようです。
- 検討事項1 使用済金属・プラスチック物品の保管・再生基準について
- 検討事項2 「完成品の製造工程」、「再生原料」について
委員構成は、学識経験者4名(東北大学・京都大学・国立環境研究所・弁護士)、自治体2名(三重県・千葉県)、事業者団体9名(自動車リサイクル、鉄リサイクル、電池、プラスチックリサイクル、非鉄金属、軽金属、全国産業資源循環連合会等の各団体)という構成であり、検討会は原則公開、議事要旨は委員の確認を経て公開される運びです。
第1回は「ヤードにおける保管・再生基準の整理」(廃棄物処理法や条例の基準を参考にした基準の検討、および使用済鉛蓄電池・家電4品目に係る基準の方向性の検討)が主眼となっています。
第2回は自治体・事業者団体からのヒアリング、第3回以降で物品特性に応じた基準の整理や政省令・ガイドラインの内容整理、完成品の製造工程等の定義整理が進められ、年度内を目途に取りまとめが行われる予定です。
第1回の実質的論点:保管基準・再生基準
保管基準・再生基準案
基準案は既存の廃棄物処理法(有害使用済機器関連の政省令)及び各地のスクラップヤード条例の規定を参照しつつ組み立てられており、次のような項目が示されています。
| 基準項目 | 第1回で示された方向性 |
|---|---|
| 囲いの設置 | 事業場の範囲を明確化し、みだりに立入ることを制限するために設置を規定する予定。 保管物の荷重が直接囲いにかかる構造の場合は、構造耐力上の安全性も求めることを検討。 多くの条例が有害使用済機器の基準と同様の内容を定めている。 |
| 掲示板の設置 | 保管等の場所であることの周知のため設置。 記載項目として、物品情報・管理者情報に加え、許可番号等も検討。 多くの条例が有害使用済機器の基準と同様の内容を定めている。 |
| 保管の高さ制限 | 電池等発火のおそれがある物品の混入を排除できない屋外保管の場合、最大5m等の上限を検討。 単一素材(金属のみ/プラスチックのみ)保管の場合は上限を設けない方針。 加えて、囲いへの接し方(非接触/一方接触/三方接触)に応じた勾配規定(水平面に対し50%勾配等)の検討を予定。 容器入りの物品やフレコン、ダイス状に圧縮した金属等を安定・直立して保管する場合には、勾配規定の適用除外を予定。 |
| 油水分離装置等の設置 | 油の漏洩や汚水の流出等のおそれがある場合、床面の不浸透性材料による被覆、油水分離装置・排水溝の設置等を検討。 |
| 生活環境保全(騒音振動・公衆衛生) | 車両走行・重機稼働等による騒音振動の防止措置、ねずみ・害虫の発生防止等の衛生管理措置の規定を予定。 |
| 区分保管・保管面積の制限 | 金属・プラスチックが混在し発火のおそれがある物品の混入を排除できない場合、区分保管や保管単位面積の制限(例:保管単位面積は200㎡以下、間隔2m以上確保)の規定を予定。 単一素材保管の場合は不要とする予定。 |
帳簿の記載事項
- 受入・搬出の年月日
- 受入・搬出品目
- 受入元・搬出先
- 受入・搬出量
- 再生年月日
- 再生方法
- 再生量
- 再生品目
- 残渣等の搬出情報
帳簿の運用
- 毎月末までの記載終了
- 1年ごとの閉鎖
- 閉鎖後5年間の保存
についても、多くの条例が有害使用済機器の基準・運用と同様の内容を定めていることを踏まえた案が示されています。
許可取得義務が適用されない小規模事業者の定義
多くの条例および有害使用済機器の基準にならい、
「保管や再生の用に供する事業場の面積が100平方メートルを超えない場合」は、許可取得不要とする考え方が示されました。
使用済鉛蓄電池・家電4品目の取扱い
使用済鉛蓄電池については、平成17年3月30日付の「使用済鉛蓄電池の取扱いに関する技術指針」(引取り、保管場所、保管方法、収集運搬、解体工程に関する規定)と同様の基準により保管・再生を行う方向が示されています。
ただし、資料3では、事業者団体からのヒアリング結果として、引取り時・排出までの保管時の絶縁措置、残留液量の確認、液口栓の締め付け確認、屋内保管、平置きといった項目について、一部対応できていない実態があることを併せて記載しており、既存の技術指針をそのまま適用することの課題も示唆されています。
家電4品目の保管・再生基準については、油・鉛・水銀・ヒ素・アンチモンの溶出防止やフロン類の回収等、環境省告示第10号(有害使用済機器の再生・処分方法)に準じた措置とする方向性です。
今後明確化すべき技術的事項
資料3の末尾では、第1回時点で「今後、明確化すべき技術的事項」として次の6点が挙げられています。
これは、各基準の実務への当てはめの際に解釈基準を統一しておくべき論点ですので、今後の検討会で議論の中心になるものと思われます。
- 完成品の製造工程・再生原料(卒業品)――再生から除かれる「完成品の製造における工程」と、使用済金属・プラスチック物品の定義から外れる「再生原料」について、個々の物品・製造業の実態を踏まえた判断ポイント・判断材料の整理が必要とされています。
- いわゆるサテライトヤード――保管場所と再生・製造のための施設が離れている場合に、許可対象となる範囲をどう考えるかの整理が必要とされています。
- 使用済物品になるタイミング――リユース品、有価で下取りした物品、交換した機器等と、規制対象となる「使用済物品」との関係の明示が必要とされています。
- 屋外保管の概念――基準の適用において「屋外」と評価される施設構造の考え方の明示が必要とされています。
- 保管業・再生業に該当する行為の範囲――「譲渡のための保管」に該当しない保管(寄託を受けた保管等)や、再生業に含まれる選別行為の考え方の明示が必要とされています。
- 生活環境保全上の許可条件――許可条件として付すことができる生活環境保全上の条件として想定される事項の例示が必要とされています。
これらの論点はいずれも、条文上の抽象的な要件(「保管」「再生」「完成品の製造工程」等)を現場でどう当てはめるかという実務的な課題であり、政省令本体ではなく、ガイドラインでの手当てが予定されています。
「専ら物」該当性や、有価物・廃棄物の区分をめぐる解釈上の問題と同種の構造を持つ論点であり、先行条例や有害使用済機器の運用実績が今後どこまで参照されるかを注視する必要があります。
既存事業場の経過的な取扱い――第1回時点では示されていない論点
許可制の導入に際して現場の事業者が最も気にかけるのは、既に操業している事業場が施行日をまたいでどう扱われるかという点だと思われます。
過去には、平成12年の廃棄物処理法改正に伴う政令改正において、従来許可不要であったがれき類・木くずの破砕施設が許可対象となった際、既存施設については一定期間内の届出により許可を受けたものとみなす経過措置が設けられました(平成12年改正政令附則第2条)。
もっとも、これは産業廃棄物処理施設の設置許可に関する経過措置であり、今回新設されるスクラップヤード事業の業許可とは制度の性質が異なります。
そのため、スクラップヤード事業は事業者の適格性(欠格要件等)まで審査される業許可であることを考慮すると、施設許可制度で採られたような“「みなし許可」の経過措置”が設けられる可能性は低いと考えています。
したがって、このままの方向性で制度設計が進むと、既存のスクラップ事業者についても、いずれかのタイミングで廃棄物処理法に基づく「スクラップヤード事業許可」を取得することが必要になるものと思われます。
ちなみに、
- 廃棄物処理業の許可業者
- 自動車リサイクル法の解体業者・破砕業者
- 小型家電リサイクル法認定事業者
- プラスチック資源循環法認定事業者
- 再資源化事業等高度化法認定事業者
- 資源有効利用促進法認定事業者
等の他の法令に基づく許可・認定を既に受けている者については、既存の許可・認定の内容に応じた、使用済金属・プラスチック物品の保管・再生を行うことが認められています(第24条の12、第24条の19関係)。
また、資料2の施行スケジュール欄には「受付準備の整った都道府県において許可申請の受付開始、許可審査」を施行前から行う旨の記載がありますが、これは改正法施行前の事前受付という運用上の措置であり、改正法施行日において、既存のスクラップヤード事業者に引き続きの操業を認めるという規定ではありません。
今後のスケジュール
資料3によれば、第2回は自治体・事業者団体からのヒアリングに充てられる予定です。
自治体ヒアリングは既に令和8年6月から7月にかけて、条例制定自治体6団体(茨城県・埼玉県・千葉県・さいたま市・千葉市・越谷市)と条例未制定自治体17団体を対象に実施済みであり、鉛精錬事業者団体からのヒアリング(令和7年11月実施)もあわせて基準案に反映されています。
第3回以降は、物品特性に応じた基準の整理、保管・再生基準に係る政省令の内容整理、政省令を踏まえたガイドラインの内容整理、そして本稿で触れた技術的事項の整理へと進み、年度内を目途に検討結果が取りまとめられる予定です。
取りまとめ後、政省令の公布とガイドラインの策定を経て、令和10年12月19日より前の施行に至る見込みです。
今回の第1回資料は、既存のスクラップヤード条例や有害使用済機器の基準を土台としつつ、それらを許可制という全国一律の枠組みに昇華させる過程で生じる調整点を丁寧に可視化した内容といえます。
実務上は、既に条例による規制を受けている事業者にとっては大きな制度変更ではない部分も多い一方、条例未制定地域の事業者にとっては新たに具体的な基準遵守義務を負うことになる点、また鉛蓄電池等の個別物品について既存の技術指針との整合をどう図るかという点が、今後の実務対応上の焦点になると考えられます。
本稿では第1回会合全体を整理しました。各論点については、重要性の高いものから順次別記事で詳しく解説します。
📋 条文や資料は読めた。でも、自社ではどう判断すればよいのか?
「条文や通知を確認して対応したつもりだった。」──それでも、実務上の判断を誤るケースは決して珍しくありません。
顧問契約では、法令や通知、審議会資料の読み解きだけでなく、
「あなたの会社では、どう判断すべきか。」
という実務上の疑問にお答えしています。
- ✅ 法令改正のタイムリーな実務解説
- ✅ 委託契約書・マニフェストのレビュー
- ✅ 担当者からの個別相談に随時対応









