廃棄物処理法改正でスクラップヤードが「許可制」に─今わかっていること、まだ決まっていないこと

本稿執筆時点の2026年6月1日現在では、まだ廃棄物処理法改正案の国会での審議が終わっていませんが、これまでの廃棄物処理法改正の経緯を鑑みると、内閣が提案した原案のまま可決制定されるものと思われます。

今回の改正の目玉の一つが、使用済みの金属・プラスチック物品を保管または再生する事業、いわゆるスクラップヤードへの許可制の導入です。

改正法案しか公開されていない現段階では、「規制の具体的内容については、判断できない」というのが実態です。

本稿では、改正法案・要綱の条文に基づいて「現時点で法律レベルで確定している事項」と「今後政令・省令で決まる予定の事項」を明確に区別して解説します。

廃棄物処理業やスクラップヤード事業に関わる方が、正確な情報をもとに準備を進めるための参考にしていただければ幸いです。


なぜスクラップヤード事業が規制されることになったのか?

環境省の調査によれば、スクラップヤードは全国に4,600件超存在することが確認されています。

その一方で、騒音・悪臭・水質汚濁・火災といった生活環境上の支障が275件報告されており、不適正なヤードを経由した金属資源の海外流出も問題視されていました。

これまでスクラップヤードが取り扱う物品は「有価物」として廃掃法の適用外に置かれてきました。

一部の自治体が条例で届出制を設けていましたが、条例のない自治体に拠点を移すことで規制を回避する業者が後を絶たず、全国統一のルールを求める声が高まっていました。

今回の改正は、その「法規制の空白地帯」を埋めるものです。

なお、現行の有害使用済機器保管等届出制度(廃棄物処理法第17条の2)は、新制度の導入に伴い廃止されます。


現段階で確定していること(法律レベルで明確な事項)

改正法案・要綱の条文上、以下の事項は現時点で明確に定められています。

① 三つの定義規定(第2条第7項〜第9項)

今回の改正で新たに法律上の定義が置かれた概念は三つです。

「使用済金属・プラスチック物品」(第2条第7項)

使用を終了し、収集された物品で、その全部又は一部が金属又はプラスチックから成るもの(廃棄物並びに放射性物質及びこれによって汚染された物を除く。)

廃棄物は明示的に除外されており、あくまで有価物として流通するスクラップが対象の上位概念です。

要適正保管使用済金属・プラスチック物品」(第2条第8項)

使用済金属・プラスチック物品であって、適正でない保管(譲渡のためのものに限る。)が行われた場合には人の健康又は生活環境に係る被害を生ずるおそれがあるため、廃棄物の適正な保管と生活環境の保全上同等の保管(譲渡のためのものに限る。)を要するもの

「譲渡のための保管」に限定されている点が重要です。自家消費目的の保管はこの定義に含まれません。

要適正再生使用済金属・プラスチック物品」(第2条第9項)

使用済金属・プラスチック物品であって、適正でない再生及び当該再生のために行う保管が行われた場合には人の健康又は生活環境に係る被害を生ずるおそれがあるため、廃棄物の適正な再生及び保管と生活環境の保全上同等の再生及び当該再生のために行う保管を要するもの

「再生のための保管」を対象に含む点で、保管のみを対象とする上記の定義と異なります。


② 許可制の導入と更新制(第24条の7)

要適正保管使用済金属・プラスチック物品の「保管業」、および要適正再生使用済金属・プラスチック物品の「再生業」を行おうとする者は、都道府県知事の許可を受けなければなりません。

許可は5年を下らない期間での更新制とされています。

具体的な更新期間は政令で定められます。


③ 一般廃棄物処分業者等は許可不要(第24条の12、第24条の19)

要綱(第1の1(3)ニ)には次のように明記されています。

一般廃棄物処分業者等は、許可を受けないで、要適正保管使用済金属・プラスチック物品の保管又は要適正再生使用済金属・プラスチック物品の再生及び当該再生のために行う保管を業として行うことができる。

既存の廃棄物処理業の許可を持つ事業者については、スクラップヤード許可を別途取得しなくとも事業継続が可能とされています。


④ 輸出に環境大臣の確認が必要(第24条の14、第24条の21)

バーゼル法上の「特定有害廃棄物等」に該当する対象物品を輸出しようとする者は、環境大臣の確認を受けなければなりません。

国内循環を原則とする姿勢が制度に組み込まれた形です。


⑤ 違反に対する命令・罰則の枠組み(第24条の9、第24条の10等)

基準違反に対する改善命令・措置命令・事業停止命令・許可取消しの規定が整備されます。

無許可営業・事業停止命令違反・無確認輸出等の重大違反には、「5年以下の拘禁刑もしくは1千万円以下の罰金、またはその併科」が適用されます。

廃棄物処理業と同等水準の罰則が新制度にも組み込まれているという点は、従来のスクラップヤード業者にとっては、大きな意識転換を迫る法律改正となります。


⑥ 施行期日(附則第1条)

スクラップヤード規制の施行は、公布の日から2年6か月を超えない範囲内で政令で定める日とされています。


今後政省令で決まること(現段階では未確定の重要事項)

ここからが、実務上最も重要な部分です。

法案段階では制度の骨格だけが決まっており、実際のルールの中身は政令・省令に委任されています。

つまり、「スクラップヤードは許可制になる」という方向性は確定しているが、具体的なルールはほぼすべて政省令待ちというのが現状です。

対象物品の具体的な品目・範囲

「要適正保管」「要適正再生」の定義自体は法律レベルで規定されています。

しかし、定義はあくまで抽象的な要件であり、具体的に、何が「使用済金属・プラスチック物品」に該当するかについては、施行後に環境省から発出される通知やQ&A等で示されるものと思われます。

実務上、最も影響の大きい論点です。

許可不要となる面積要件の具体的数値

第24条の7のただし書きでは「保管の用に供する事業場の敷地面積が政令で定める面積以下である者」は許可不要とされていますが、その具体的な数値は現時点では示されていません。

その詳細は、廃棄物処理法施行令で示される予定です。

「保管面積」ではなく、「保管の用に供する事業場の敷地面積」である点にも注意が必要です。

「政令で定める者」の範囲

許可不要とされる者の詳細な列挙は政令に委ねられています。

保管・再生の具体的技術基準

施設の構造・管理方法・保管量の上限等、日々の業務に直結する基準が廃棄物処理法施行規則で定められます。

現場運営に最も影響するルールがここで決まります。

許可申請の手続・添付書類

これも省令委任です。

実際に申請する際に何が必要になるかは、省令公表を待つ必要があります。

スクラップヤード規制の対象はスクラップ業者だけとは限らない

今回の制度は、「スクラップヤード事業者」という業種を規制するものではなく、一定の使用済金属・プラスチック物品の保管・再生行為を規制する制度です。

そのため、製造業者、解体業者、電気工事業者等が、譲渡目的で使用済金属等を保管している場合には、スクラップ業者でなくても制度の対象となる可能性があります。

「当社はスクラップヤード事業者ではないので今回の改正は関係ない」と考えていた企業であっても、今後公表される政省令や通知の内容によっては、許可取得や届出等の対応が必要となる可能性があることにご注意ください。


処理業者として今できること

施行まで最長2年6か月の猶予があるとはいえ、政省令の内容が出揃ってから動き始めたのでは、準備期間が想定より短くなる可能性があります。

今この段階でできることは二つです。

自社の事業実態の棚卸し

現在取り扱っているスクラップについて、廃棄物として受け入れているものと有価物として受け入れているものを明確に区分し、後者がどの程度の規模・品目に及ぶかを把握しておくことが、今後の対応判断の土台になります。

政省令が出た瞬間に「自社に何が降りかかるか」をすぐ判断できる状態にしておくことが重要です。

政省令の動向を一次情報でフォロー

環境省が発表する一次情報に当たる習慣が、実務上のリスク管理につながります。


まとめ

今回の改正で、スクラップヤードへの許可制導入が行われる見込みです

しかし実務に直結する具体的な基準・対象品目・申請手続はほぼすべて政省令待ちです。

「決まったこと」と「まだ決まっていないこと」を混同せず、正確な情報をもとに準備を進めることが、現時点での最善の対応です。

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