2026年6月19日、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律等の一部を改正する法律(令和8年法律第43号)」が公布されました。
この改正のうち、災害廃棄物処理の推進に関する規定は、「公布の日から起算して3月を超えない範囲内において政令で定める日(現時点では、その政令は未制定)」から施行となります。
※つまり、遅くとも、2026年9月19日までに施行される予定
能登半島地震では、仮置場の確保、処理施設の確保、自治体間の連携など、平時からの準備不足が課題として改めて認識されました。
それらの近年の大規模災害の教訓を踏まえ、従来の「災害発生後の対応」から「平時からの備え」をより重視した制度改正が行われました。
本記事では、災害廃棄物対策に関連する主な改正内容と、実務上の留意点について解説します。
「災害廃棄物対策」関連の改正全体像
今回の改正は、主に以下の3つの柱で構成されています。
- 平時からの備えの制度化(計画策定・協定締結)
- 災害時の処理を円滑化するための仕組み
- 被災自治体への支援体制の強化
出典:環境省 「廃棄物の処理及び清掃に関する法律等の一部を改正する法律案について(令和8年4月)」
主要な変更点
1. 「非常災害廃棄物」の定義の新設(第2条の3)
新たに「非常災害廃棄物」という用語を定義し、災害時に生じた廃棄物を法律上明確に位置づけ。
2. 市町村の災害廃棄物処理計画の義務化(第6条第2項第六号)
市町村が定める一般廃棄物処理計画の記載事項に、「非常災害時における一般廃棄物の適正な処理等に関する施策に関する事項」を追加。
3. 協定締結の努力義務(第5条の6の2・第6条の4)
都道府県および市町村に対し、非常災害廃棄物適正処理業者等との災害支援協定の締結を努力義務化。
出典:環境省 「廃棄物の処理及び清掃に関する法律等の一部を改正する法律案について(令和8年4月)」
4. 再委託に関する特例の整備(第6条の2)
市町村から災害廃棄物処理の委託を受けた事業者が、環境省令で定める要件(現在は未制定)を満たす場合には再委託を可能とする特例の追加
出典:環境省 「廃棄物の処理及び清掃に関する法律等の一部を改正する法律案について(令和8年4月)」
5. 一般廃棄物処理施設の設置手続の特例(第9条の3の3)
非常災害廃棄物処理受託者等が、非常災害廃棄物の処分のために一般廃棄物処理施設を設置する場合、都道府県知事への届出時に生活環境影響調査の結果を記載した書類の添付を省略できる特例の追加。
この特例は、産業廃棄物処理業者が保有する既存施設も対象とされており、廃畳専用の切断施設や石膏ボード破砕施設など、災害時に活用が見込まれる施設の迅速な設置を後押しします。
※補足:近年の畳には、「スタイロ畳」のように廃プラスチック類に該当する物もあるため、廃棄物の実際の区分は畳の部材によって変わってきます。
出典:環境省 「廃棄物の処理及び清掃に関する法律等の一部を改正する法律案について(令和8年4月)」
6. 非常災害廃棄物最終処分場の指定制度の創設(第9条の3の4)
都道府県知事は、申請に基づき、一般廃棄物または産業廃棄物の最終処分場の設置者を「非常災害廃棄物最終処分場の設置者」として指定できるようになりました。
指定を受けた事業者は、正当な理由がない限り、市町村からの委託を拒否できません。
出典:環境省 「廃棄物の処理及び清掃に関する法律等の一部を改正する法律案について(令和8年4月)」
7. JESCOへの業務追加(第23条の2の2)
中間貯蔵・環境安全事業株式会社(JESCO)の業務に、非常災害廃棄物処理に関する専門人材の派遣等が追加されました。
これにより、被災自治体に対する技術的支援を行うことが可能となりました。
ただし、具体的な支援内容や方法については、今後詳細が示される予定です。
実務的な留意点
一般廃棄物処理施設の設置手続の特例
今回の改正により廃棄物処理法上の手続は一定程度簡素化されましたが、一般廃棄物処理施設の設置である以上、実務的には建築基準法第51条の許可が不可欠となるケースがほとんどです。
ちなみに、廃棄物処理法で設置許可が必要な一般廃棄物処理施設は、処理をするごみの種類を問わず
- 1日あたり5トン以上の一般廃棄物を処理できる施設
- 1時間当たりの処理能力が200キログラム以上又は火格子面積が2平方メートル以上の焼却施設
- 一般廃棄物の最終処分場
となります。
災害時における一般廃棄物処理施設の迅速な設置という観点では、
廃棄物処理法の手続が簡素化されても、建築基準法第51条の許可手続は別途必要となるため、今回の改正によって一般廃棄物処理施設の設置に要する期間が大幅に短縮されるわけではありません。
そのため、被災地の迅速な復興という目的を十分に実現するためには、廃棄物処理法の改正のみならず、建築基準法第51条に係る制度の見直しも不可欠です。
もっとも、建築基準法は国土交通省の所管であるため、この点については、国土交通省側の今後の制度改正を待つしかありません。
非常災害廃棄物最終処分場の指定
「非常災害廃棄物最終処分場の指定」については、一度指定を受けると、市町村から非常災害廃棄物の処分を求められた際には、正当な理由がない限り、処分を拒否できなくなります。
この指定は事業者自身の申請に基づき行われるものですが、自社事業への影響が大きい決断であるため、
「地元への貢献姿勢の評価」というメリットと
「災害廃棄物の受入による、自社の最終処分場の残存容量減少」というデメリット
の双方を慎重に比較検討した上で、指定申請の可否を判断した方が良いでしょう。
まとめ
今回の改正は、災害廃棄物処理を「事後対応型」から「平時からの備えと柔軟な処理体制の構築」へシフトさせる内容となっています。
特に、計画策定義務、協定締結の努力義務、施設設置手続の特例、最終処分場の指定制度が主な変更点です。
ただし、建築基準法をはじめとする他法令の手続が残るため、実際の運用面では引き続き課題が残っています。
今後、政省令や通知の整備状況を注視していく必要があります。
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