「映画泥棒」と「不法投棄」では、どちらがより重い刑事罰の対象になる?

映画館で上映前に流れる、あの有名な映像――
「NO MORE 映画泥棒」。

映画盗撮を、「マナー違反」「せいぜい軽い法律違反」くらいに考えている方はいないでしょうか?

一方で、「不法投棄」と聞くと、「重大な犯罪」「環境を壊す行為」というイメージを持つ人が多いはずです。

では、法律上の罰則はどうなっているのでしょうか?

環境を壊す不法投棄の方が重い罰則に違いない?

実は、刑事罰だけを比べると、
映画泥棒の方が不法投棄より“重い罪”として設計されています。

この記事では、

  • それぞれの刑事罰
  • 根拠となる条文
  • なぜこのような差があるのか

を整理してみます。


1.映画泥棒の刑事罰(根拠条文)

① 映画盗撮そのものを位置づける法律

映画の盗撮の防止に関する法律(平成19年法律第65号)

この法律は全4条しかなく、
実は罰則そのものは定めていません

重要なのは次の条文です。

▷ 第4条

映画の盗撮については、著作権法第30条第1項の規定は、適用せず、映画の盗撮を行った者に対する同法第119条第1項の規定の適用については、同項中「第30条第1項(第102条第1項において準用する場合を含む。第三項において同じ。)に定める私的使用の目的をもつて自ら著作物若しくは実演等の複製を行つた者、第113条第2項」とあるのは、「第113条第2項」とする。

つまり、
「自分で楽しむだけだからOK」という
私的複製の言い訳を、映画館では完全に封じたのがこの法律です。


② 実際に適用される刑事罰

罰則の根拠は 著作権法 にあります。

▷ 著作権法 第119条第1項

著作権、出版権又は著作隣接権を侵害した者(第三十条第一項(第百二条第一項において準用する場合を含む。第三項において同じ。)に定める私的使用の目的をもつて自ら著作物若しくは実演等の複製を行つた者、第百十三条第二項、第三項若しくは第六項から第八項までの規定により著作権、出版権若しくは著作隣接権(同項の規定による場合にあつては、同条第九項の規定により著作隣接権とみなされる権利を含む。第百二十条の二第五号において同じ。)を侵害する行為とみなされる行為を行つた者、第百十三条第十項の規定により著作権若しくは著作隣接権を侵害する行為とみなされる行為を行つた者又は次項第三号若しくは第六号に掲げる者を除く。)は、十年以下の拘禁刑若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

映画館での盗撮は、

  • 私的複製が否定され
  • その瞬間に著作権侵害が成立し
  • いきなりこの重罰の対象になります。

2.不法投棄の刑事罰(根拠条文)

▷ 廃棄物処理法 第25条第1項

 次の各号のいずれかに該当する者は、5年以下の拘禁刑若しくは1千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
一~十三 (略)
十四 第16条の規定に違反して、廃棄物を捨てた者
十五・十六 (略)

なお、法人が関与した場合には、両罰規定で最大3億円以下の罰金が科される可能性もありますが、
個人の法定刑としては 5年以下の拘禁刑 が上限です。


3.刑事罰を並べてみると

行為拘禁刑罰金
映画泥棒(映画盗撮)10年以下1,000万円以下
不法投棄5年以下1,000万円以下

👉
拘禁刑の上限は、映画泥棒の方が重い
という結果になります。


4.なぜ映画泥棒は不法投棄より重罰なのか?

理由は「マナーの悪さ」ではありません。
刑事政策上の判断です。

① 被害が一気に拡散する

映画盗撮は、

  • 撮影したのは1人でも
  • 海賊版の“元データ”になり
  • 国内外に一瞬で拡散する

1回の行為が、産業全体に甚大な損害を与える
という性質を持っています。


② 国際問題だった

映画盗撮防止法が制定された背景には、

  • 日本の映画館が
    世界の海賊版供給源になっている
  • 国際的な強い是正要求

がありました。

そのため、
「軽い罰では抑止にならない」
最重レベルの著作権侵害と同列に扱う
という設計が採られました。


③ 目的は「実刑」ではなく「抑止」

実務上、
すべての映画泥棒が10年の拘禁刑になるわけではありません。

しかし、

「やったら人生が終わるかもしれない」

と思わせること自体が、立法目的です。

これは不法投棄と共通する考え方でもあります。


5.映画泥棒で逮捕された実例

実際に、映画盗撮で逮捕された例は存在します。

たとえば、

  • 「劇場版『鬼滅の刃』無限城編 第一章」の上映中に
  • スマートフォンで本編を録画
  • そのデータが端末内から発見され
  • 著作権法違反で逮捕

というケースが、報道されています。

多くの場合、

  • その場で現行犯逮捕されるのではなく
  • 別件捜査やデータ解析から発覚

しているのが特徴です。

「バレなければ大丈夫」という考えは、現実には通用しません。


6.まとめ

映画泥棒と不法投棄。
どちらも「軽い気持ち」で行われがちですが、

  • 映画泥棒 → 10年以下の拘禁刑
  • 不法投棄 → 5年以下の拘禁刑

という刑事罰が用意されています。

これは価値判断ではなく、
社会的被害の広がり方を踏まえた刑事政策の結果です。

映画泥棒は、マナー違反ではありません。
重大な刑事犯罪です。

また、「不法投棄」は、現状では「5年以下の拘禁刑もしくは1千万円以下の罰金、または併科」の対象ですが、「映画泥棒と同様の抑止力が必要だ!」と問題視されるような事態が起きた場合、「10年以下の拘禁刑」とさらに重罰化されてもおかしくはありません。

個人的には、廃棄物処理法違反は環境面のみならず、「映画泥棒」と同様に、経済活動へも深刻な悪影響を及ぼす犯罪ですので、「10年以下の拘禁刑」くらいでちょうど良い気がします。

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