一般廃棄物回収中のシートベルト着用義務について

車を運転する際には、特別の除外事由に該当しない限り、シートベルトを着用しないと、道路交通法違反となることはすべてのドライバーが理解していることと思います。

しかし、「特別の除外事由」がどんな条件となっているかを正確に理解している人となると、かなり少なくなるのではないでしょうか?(※私自身、記事執筆以前は正確に理解してはいませんでした)

今回は、「特別の除外事由」のうち、一般廃棄物回収車両を運転する場合に該当するケースをご紹介します。

本日のテーマに関する一般的な疑問とそれへの明確な回答を端的にまとめたサイトを見つけました。

鳥取市>過去に寄せられた提案と市の回答>「2023.10.16 ごみ収集車のシートベルトについて

ごみ収集車の運転席と助手席の両方の方がシートベルトをしていないのを見かけます。
特別に許されているのかわかりませんが、せめて運転席の方はするべきではないですか?
 
回答
 法律の規定により、一般ごみの収集業務に従事する者については、頻繁に自動車を乗降することを必要とする区間において、シートベルト着用義務の免除が認められております。
 この点について違反とならない旨、警察にも確認しております。
 ただし、地域から地域への移動や、ごみ収集施設への移動時はシートベルトを着用することとしており、目撃された場所がどのような業務中であったかはわかりませんが、このようなご指摘があったことについては、ごみ収集業者に申し入れ、今後も交通ルールを順守するとともに、安全運転に努めさせていただきます。

<関係法令>
道路交通法/第七十一条の三(普通自動車等の運転者の遵守事項)
道路交通法施行令/第二十六条の三の二(座席ベルト及び幼児用補助装置に係る義務の免除)
座席ベルトの装着義務の免除に係る業務を定める規則(国家公安委員会規則)

「提案」というよりは、おそらく「苦情」だったのだろうと思いますが、鳥取市の回答は、その提案内容に沿いながら、理路整然と問題が無いことを示していますので、行政の苦情対応としては完璧なものと思います。

個人的には、根拠法令の条文番号まで示してくれている点も有難かったです。

鳥取市にここまでお膳立てしてもらっていますので、ここから少し味付けをしていきます。

まずは、シートベルト着用義務を規定した道路交通法の規定から

道路交通法第71条の3(普通自動車等の運転者の遵守事項)

 自動車(大型自動二輪車及び普通自動二輪車を除く。以下この条において同じ。)の運転者は、道路運送車両法第三章及びこれに基づく命令の規定により当該自動車に備えなければならないこととされている座席ベルト(以下「座席ベルト」という。)を装着しないで自動車を運転してはならない。ただし、疾病のため座席ベルトを装着することが療養上適当でない者が自動車を運転するとき、緊急自動車の運転者が当該緊急自動車を運転するとき、その他政令で定めるやむを得ない理由があるときは、この限りでない。
2・3 (略)

道路交通法第71条の3は、自動車運転時に、運転者に対し「座席ベルト(シートベルト)」の装着を一律に義務付けている条文です。
「シートベルトを未装着で自動車を運転することを一律に禁止」している条文と言い換えることも可能です。

黄色の蛍光色でハイライトした「その他政令で定めるやむを得ない理由があるとき」には「この限りではない」、すなわち「一律禁止の対象から除外される」ことになります。

これを「除外規定」あるいは「除外事由」と言いますが、鳥取市が示してくれているとおり、具体的には「道路交通法施行令第26条の3の2」が該当します。

道路交通法施行令第26条の3の2(座席ベルト及び幼児用補助装置に係る義務の免除) 
 法第71条の3第1項ただし書の政令で定めるやむを得ない理由があるときは、次に掲げるとおりとする。一 負傷若しくは障害のため又は妊娠中であることにより座席ベルトを装着することが療養上又は健康保持上適当でない者が自動車を運転するとき。
二 著しく座高が高いか又は低いこと、著しく肥満していることその他の身体の状態により適切に座席ベルトを装着することができない者が自動車を運転するとき。
三 自動車を後退させるため当該自動車を運転するとき。
四 法第41条の2第1項に規定する消防用車両(次項第四号において「消防用車両」という。)である自動車の運転者が当該消防用車両である自動車を運転するとき。
五 人の生命若しくは身体に危害を及ぼす行為の発生をその身辺において警戒し、及びその行為を制止する職務又は被疑者を逮捕し、若しくは法令の規定により身体の自由を拘束されている者の逃走を防止する職務に従事する公務員が当該職務のため自動車を運転するとき。
六 郵便物の集配業務その他業務のため自動車を使用する場合において当該業務に従事する者が頻繁に当該自動車に乗降することを必要とする業務として国家公安委員会規則で定める業務に従事する者が、当該業務につき頻繁に自動車に乗降することを必要とする区間において当該業務のために使用される自動車を運転するとき
七 自動車に乗車している者の警衛若しくは警護を行うため又は車列を組んでパレード等を行う自動車に係る交通の安全と円滑を図るためその前方及び後方等を進行する警察用自動車(緊急自動車である警察用自動車を除く。次項第七号において同じ。)により護衛され、又は誘導されている自動車の運転者が当該自動車を運転するとき。
八 公職選挙法の適用を受ける選挙における公職の候補者又は選挙運動に従事する者が同法第141条の規定により選挙運動のために使用される自動車を当該選挙運動のため運転するとき。
2・3 (略)

第六号に、「郵便物の集配業務」と「その他業務のため自動車を使用する場合」が挙げられています。

上記の「その他業務のため自動車を使用する場合」の詳細を規定した「座席ベルトの装着義務の免除に係る業務を定める規則」を見ていきましょう。

座席ベルトの装着義務の免除に係る業務を定める規則
 道路交通法施行令第26条の3の2第1項第六号の規定に基づき、座席ベルトの装着義務の免除に係る業務を定める規則を次のように定める。
 道路交通法施行令第26条の3の2第1項第六号の国家公安委員会規則で定める業務は、次に掲げるとおりとする。
一 民間事業者による信書の送達に関する法律第2条第6項に規定する一般信書便事業者又は同条第九項に規定する特定信書便事業者が行う同条第三項に規定する信書便物の取集め又は配達の業務
二 廃棄物の処理及び清掃に関する法律の規定に基づき、市町村又は一般廃棄物の収集を市町村から委託された者若しくは一般廃棄物の収集につき市町村長から許可を受けた者が行う一般廃棄物の収集業務
三 貨物自動車運送事業法の規定に基づき行う貨物自動車運送事業に係る業務、道路運送法第78条第三号の規定による許可を受けて行う貨物の運送に係る業務又は貨物利用運送事業法の規定に基づき行う第二種貨物利用運送事業に係る業務のうち、貨物の集貨又は配達を行う業務
四 米穀、酒類、牛乳若しくは清涼飲料の小売業その他物品の小売業(販売の方法として物品の配達(当該物品に係る容器の回収を含む。以下同じ。)を行うものに限る。)又はクリーニング業に係る業務のうち、戸別に当該物品の配達又は洗たく物の受取若しくは引渡しを行う業務
五 清涼飲料、パンその他の飲食料品の製造業(飲食料品を製造し、かつ、製造した飲食料品の配達を行うものに限る。)又は卸売業に係る業務のうち、当該飲食料品の小売業その他当該飲食料品を使用して営む営業に係る店舗その他これに類する施設ごとに当該飲食料品の配達を行う業務

ようやく最後の法令根拠となります。

上記規則第二号で、「『市町村又は一般廃棄物の収集を市町村から委託された者若しくは一般廃棄物の収集につき市町村長から許可を受けた者が行う一般廃棄物の収集業務』の際には、シートベルトを装着しなくても道路交通法違反ではない」と明示されています。

一般廃棄物収集運搬中は、頻繁な乗降を繰り返し、低速で車両を運転する必要があります。

特に、頻繁な乗降が不可欠という事情が、シートベルト装着義務が免除されている理由の主因かと思います。

ここで注意が必要な点は、「一般廃棄物収集運搬車の運搬中であれば、いつ何時もシートベルトを着用しなくても良い」ではなく、

「頻繁に自動車に乗降することを必要とする区間における一般廃棄物収集運搬業務の間」のみシートベルト装着義務が免除されるということです。

具体的には

  • 一般廃棄物回収後に清掃工場へ向かう途上
  • 幹線道路やバイパス等の走行移動
  • 収集作業を伴わない待機・回送・移動

等の場合は、「頻繁に自動車に乗降することを必要とする区間における一般廃棄物収集運搬業務」には該当しませんので、道路交通法の原則どおり、運転者はシートベルトの装着が不可欠となります。

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