「建設廃棄物を事業場外保管する際の届出」で予告をしていた続編となります。
「廃棄物処理法第21条の3」は、建設廃棄物の排出事業者は「元請」であると規定した条文です。
2010年改正で追加された条文であるため、改正法施行後15年近く経過しましたが、建設業界は裾野が広いためか、元請と下請の双方にこの条文に関して誤解している人がいまだに多々見受けられます。
今回は、「元請の排出事業者責任」を定めた「廃棄物処理法第21条の3第1項」ではなく、「下請が自ら運搬することを認めた特例」である「廃棄物処理法第21条の3第3項」を取り上げます。
ただし、著書や企業発行メールマガジンで既に詳細を解説済みですので、ブログでは簡略版として要点のみをまとめておきます。
※このテーマを解説した著書を検索したところ、中古本しか流通していない状況ですので、紹介するのはやめておきます。長岡文明先生との共著で、玄人受けする本だったので残念です。
まずは、廃棄物処理法の根拠条文から
廃棄物処理法第21条の3 第3項
建設工事に伴い生ずる廃棄物(環境省令で定めるものに限る。)について当該建設工事に係る書面による請負契約で定めるところにより下請負人が自らその運搬を行う場合には、第7条第1項、第12条第1項、第12条の2第1項、第14条第1項、第14条の4第1項及び第19条の3(同条の規定に係る罰則を含む。)の規定の適用については、第1項の規定にかかわらず、当該下請負人を事業者とみなし、当該廃棄物を当該下請負人の廃棄物とみなす。
「環境省令で定めるものに限る」がポイントとなり、具体的には「廃棄物処理法施行規則第18条の2」で次のように規定されています。
廃棄物処理法施行規則第18条の2(法第21条の3第3項の環境省令で定める廃棄物)
法第21条の3第3項の環境省令で定める廃棄物は、次の各号のいずれにも該当すると認められる廃棄物とする。
一 次のいずれかに該当する建設工事に伴い生ずる廃棄物(特別管理一般廃棄物及び特別管理産業廃棄物を除く。次号において同じ。)であるもの
イ 建設工事(建築物等の全部又は一部を解体する工事及び建築物等に係る新築又は増築の工事を除く。)であつて、その請負代金の額が500万円以下であるもの
ロ 引渡しがされた建築物等の瑕疵の修補に関する工事であつて、これを請負人に施工させることとした場合における適正な請負代金相当額が500万円以下であるもの
二 次のように運搬される廃棄物であるもの
イ 一回当たりに運搬される量が1立方メートル以下であることが明らかとなるよう区分して運搬されるもの
ロ 当該廃棄物を生ずる事業場の所在地の属する都道府県又は当該都道府県に隣接する都道府県の区域内に存する施設(積替え又は保管の場所を含み、元請業者(法第21条の3第1項に規定する元請業者をいう。)が所有権を有するもの(所有権を有しない場合には、当該施設を使用する権原を有するもの)に限る。)に運搬されるもの
ハ 当該廃棄物の運搬途中において保管が行われないもの2 建設工事を同一の者が二以上の契約に分割して請け負う場合においては、これを一の契約で請け負つたものとみなして、前項第一号イの規定を適用する。ただし、正当な理由に基づいて契約を分割したときは、この限りでない。
上記の「環境省令で定める廃棄物」に該当する建設廃棄物の場合は、廃棄物処理法第21条の3第3項の特例に基づき、産業廃棄物収集運搬業者ではない下請に運搬が認められています。
逆に言うと、「環境省令で定める廃棄物に該当しない建設廃棄物」の場合は、それを運ぶ下請業者には産業廃棄物収集運搬業許可が不可欠です。
条文のままでは読みにくいため、「環境省令で定める廃棄物」の詳細を箇条書きにまとめます。
| 1.次のいずれかの工事で発生した廃棄物であること(特別管理一般廃棄物と特別管理産業廃棄物を除く) •解体、新築、増築を除く建築工事で、請負代金が500万円以下のもの •引渡しがされた建築物等の瑕疵の修補に関する工事で、請負代金相当額が500万円以下であるもの 2.下記のすべての条件にあてはまる廃棄物であること •1回当たりに運搬される量が1立方メートル以下であることが明白な状態で選別されていること •工事現場が位置する都道府県、または隣接する都道府県にある施設に運搬されること(ただし、元請業者が使用権限を持っている施設に限る) •運搬の途中で保管をしないこと |
「1」では、対象となる建設工事の種類が規定されています。
「2」では、対象となる建設廃棄物の「量」「運び先」「運搬方法」が規定されています。
最後に、廃棄物処理法第21条の3第3項適用条件の判断フローを掲載しておきます。
