家に無事帰るまでが遠足です

浜の真砂は尽きるとも、世に盗人の種は尽きまじ」に続き、大阪・関西万博閉幕関連の報道です。

2025年10月12日付 MBS 「万博・閉幕後に新たな危惧 「解体工事」めぐる”未払い”…業界団体が「絶対起きる」と指摘するそのワケは? 博覧会協会が発注の工事で”費用の未払い”発覚 協会に相談するも「立ち入れるものではない」との返答

各国のパビリオンの建築遅れや下請業者への不払い等が問題となっていたことが記憶に新しいところです。

元請け業者の「GLイベンツジャパン」から、工事費用の一部が支払われていないといいます。理由は「工期の遅れなどによるペナルティが発生していて、支払える金額は残らない」などと説明されました。

いまだ代金未払い問題は解決していないところですが、万博閉幕に伴うパビリオン解体についても問題山積のようです。

博覧会協会は、来年4月までの半年間で海外パビリオンの解体を終える計画を立てていて、すでに複数の事業者がパビリオン側と「解体工事」の契約手続きに入っているとみられています。

大阪府内のCさんの会社にも、いくつかの海外パビリオンの「解体工事」依頼が来ましたが、提示された費用の見積もりや、想定する工期の短さなどに不安を感じ、契約は踏みとどまっている状況です。

(大阪府内・解体工事業 Cさん)「どの海外の方も一緒なんですけど、まずコストが優先的に出てくる。そのコストはどこで調べたのかというと、一般的なネットで調べたかたち。『予算組みをしてしまっている関係上、今からこれ以上の金額は捻出できないので、木造(家屋)の解体(の坪単価)でできるはずだから、この解体(費用)できるはずです』と。同じ価値観でできる国を探すのが先決なんでしょうけど、リスクがあるかぎり積極的に(契約を取りに)いこうとも正直思わない」

「来年4月まで」というのは、「解体工事の終了」のみならず、「解体廃棄物の最終処分完了」までを含めた期間と思われますが、もしそうならば、そろそろ解体廃棄物の処分先を含めた解体工事計画の目鼻を付けたい頃合いかと思います。

しかるに、解体工事業界側でもおいそれと工事受注に踏み切れない事情があるようです。

(大阪府解体工事業協会 名和祥行代表理事)「いま産廃(処分場所)が飽和状態で、持っていっても受け取れない。そうなってくると、だんだん現場が進まないので、それで工期が遅れる。遅れたら『工期守っていないからお金払いませんよ』と。そういう問題があるのではないかと危惧しています」

「処分場所が飽和状態」とは、中間処理業者が受注控えをしているというよりは、「最終処分場(特に管理型最終処分場)が処分費値上げ交渉の際中」という意味ではないかと思われます。

最終処分場の残存容量的には、大部分の最終処分場の残存容量が枯渇寸前という状況ではないものの、埋立処分費の値上げ交渉は各地で活発に行われているためです。

なお、最終処分場が処分費を値上げすると、中間処理業者と収集運搬業者にも値上げの必要性が増しますので、長期的には、他の物価と同様に、産業廃棄物処理費は上昇傾向に入ります。

歴史的にこうした状況では、正規業者が値上げをする一方で、無許可業者が暗躍する余地が増えるため、建設廃棄物の不法投棄が増加しがちです。

重層的な下請構造が、排出事業者責任の希薄化にさらに拍車をかけます。

この痛い経験から、2010年の廃棄物処理法改正で「元請が建設廃棄物の排出事業者」と規定(廃棄物処理法第21条の3)され、たとえ下請の独断で行われた不法投棄であっても、元請に責任追及できるようになりました。

万博会場の場合、万博協会との契約がありますから、施設自体の撤去は4月末までに確実に行われることと思いますが、建設廃棄物の処理費を元請が確実に負担するかどうかという懸念があります。

なにかと理由をつけて下請への支払いを渋った業者が複数いたことを考慮すると、解体時は、建築時以上に支払いトラブルが増えそうです。

報道で紹介されていた「大阪府解体工事業協会代表理事」のコメント 「万博の成功は、解体工事が完了するまで」は、まさに至言です。

「お客さんがいっぱい来て良かったなあ~」ではなく、建物の後始末まで完璧に終えてこそ、ようやく万博の終幕と言えます。

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